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【漫画に描かれた歴史④】アドルフに告ぐ【青木裕司と中島浩二の世界史ch:0066】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


動画版:【漫画に描かれた歴史④】アドルフに告ぐ

中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。


青木:

お願いします。


中島:

ここのところずっと漫画で読む歴史ということでやっておりますけれども、今回は?


青木:

20世紀の暗い時代を描いた手塚治虫先生の「アドルフに告ぐ」。


中島:

僕、20代半ばからパタッと漫画を読まなくなったんです。30歳を越えて読んだのがこの「アドルフに告ぐ」で、結局そこからもまた読んでないので、ものすごく自分の中で大河ドラマなんですよ。時は1936年のベルリンオリンピックのところから始まるんですね。ベルリンオリンピックでドイツに留学している弟がいる新聞記者が「お兄さん、ベルリンに取材に来るんだったら待ち合わせてご飯食べない?」って。「ちょっと話があるんだ」というふうに聞いて「わかったわかった」といってその弟との待ち合わせのところに行こうとしたら弟が来ない。アパートに行ったら自殺していたというところからサスペンスが始まるんですけれども、1936年のベルリンオリンピックといったら国威掲揚でドイツがどんどん危うい時代に「自分たちの力はすごいんだぞ」ということに使ったオリンピックでもあるんですよね。


青木:

そうですね。ちなみにあのオリンピックから始まったのが聖火リレーですね。やると決めたら盛り上げようというのでアテネから聖火を持ってきたんです。その逆のルートをたどって1941年にユーゴスラビアやギリシャにナチスドイツは侵略するんですけどね。


中島:

その弟が自殺して、ワーッと救急車というか運ばれていって、警察に行って遺体を取りに行けと言われて警察に行ったら「そんな話知らないよ」というところから始まって、日本、ドイツ、第二次世界大戦、太平洋戦争というところを経ながら日本でも神戸という、これ実は手塚さんがもともと神戸なんですよ。だから神戸で、これがまた神戸といったら港町ですから、いわゆるたぶん手塚さんとかもそういうのを経験してらっしゃるんでしょうけれども、たくさん外国の人がいらっしゃったんですね。


青木:

たぶんね。


中島:

その外国の人の中でドイツ人もいて、ユダヤ人もいて、その仲良かった日本にいるドイツ人とユダヤ人がだんだんまた変な感じになってドイツの、子ども同士なんですよね。本当は仲良いけれどもユダヤ人のちょっと兄貴分の子と弱っちいけれどもいつも守ってもらっていたドイツ人の子とというその話もあってアドルフなんですよね。


青木:

3人のアドルフが出てきて、説明していただいたように神戸にいる日本人とドイツ人のハーフであるアドルフ・カウフマンという、ちょっと気が弱い男と、その親友のひとりですね、アドルフ・カミルという、この子がユダヤ人。神戸のパン屋さんの息子さん。そしてもう1人のアドルフは言うまでもなくアドルフ・ヒトラーですね。


中島:

よく歴史の噂で聞くような話みたいなのもこの中には入っていて。


青木:

ネタバレになるのであんまり詳しくは言わないほうが良いのかな。アドルフ・ヒトラーに関するある重大な秘密があると。それを調べるためドイツの秘密警察ですね、ゲシュタポと言われますけども、そういう連中が日本にまでいろいろ調べに来たりすると。どうも主人公、峠草平という新聞記者なんですけど、その弟さんが亡くなったことにもそれがどうも関連しているらしい。


中島:

壮大な話ですよね。最初は全然わからない話からずっと話がいくんですけど、少しずつ少しずつつながっていくんですよね。


青木:

いろんな筋がだんだん回収されていくんですよね。後半になりますとゾルゲ事件という日本最大のスパイ事件、これなんかも絡んでくるわけですよね。ゾルゲ事件はリヒャルト・ゾルゲというソ連のスパイなんですけどもドイツの新聞記者と姿を変えて日本なんかにやってき

て日本の軍事機密情報を手に入れると。その情報の入手先の1人が誰だったかというと尾崎秀実という人で、この人は戦前の日本の総理大臣だった近衛文麿さんの最重要ブレーンだったんです。近衛文麿さんが朝飯を食べるときに情報交換会をする、その中心人物だった。その尾崎秀美さん、政権中枢にいる尾崎秀実さんから情報を入手して、ソビエト連邦にいろんな情報を与えるわけです。特にドイツと戦争が起こって、ソ連と。そのときに日本が攻めるか攻めないかというのは大きな問題だったんです。日本にはソビエト連邦を攻める気はないという重要な情報を実はソ連にもたらしたんです。これでスターリンが安心し

てドイツとの戦争に集中できたという。歴史的にも非常に有名な事件で、戦前の日本に治安維持法という法律がありましたよね。国体の変革、国家体制を変革しようとしたものは最高刑が死刑。この法律に従って処刑

されたひとつが実はゾルゲと尾崎秀美さん。尾崎秀美さん、実は僕、日本史学科の出身で、実は。


中島:

世界史のカリスマ講師とずっと言っていますけど九州大学の日本史学科のご出身。


青木:

実はそうなんですよね。ちなみに言っておくと世界史の専門家っていませんからね。それはそうですよ、東洋史と西洋史があって日本史、国史があるわけです。だから世界の歴史すべてを大学で勉強した人というのはまずいないです。世界史の先生というのは大学を卒業したあとに自分の専門でないところを一生懸命勉強する。僕もそうだったんです。だから「あいつプロじゃないんだな」とは思わないで。僕は学生のときに尾崎秀美さんを題材にして卒論を書いたんです。そんな話も絡めながら最終的にはアドルフ・ヒトラーの持っている謎みた

いなものも明かされていく。


中島:

僕が「アドルフに告ぐ」が一番好きなのは、どうしても第二次世界大戦というとドイツ、そしてユダヤの人たちという話ってやっぱりたくさん出てくるんですよね。やっぱりいろんなところでそういうのを見聞きしたんですけれども、そのあとまで描きましたよね。僕はそれが一番、手塚先生すごいなと思ったのは、イスラエルが建国して、そしてそのあと中東でというところまでこれは描かれているんです。それを全部描いたものって今まで見たことがないです。戦前、戦争前夜から大戦が終わるまでというのは今までいろんなもので見ましたけど、そのあとどうなった?って、じゃあ建国したほうがどうしたかとかそこまで書いているというのは日本人だからこ

そ描けたかなと思います。


青木:

最後の最後に表題の「アドルフに告ぐ」という言葉の意味が最後の最後にわかるという。


中島:

すばらしい作品です。


青木:

考え尽くされた作品ですよね。


中島:

すごいですね、本当に。これは僕、大人になって読んで、しかもある程度歴史を勉強して読んでよかったなというふうに思います。


青木:

実は週刊誌の文藝春秋、あの連載だったんです。


中島:

そうみたいですね。あとがきで「こんな大河ドラマみたいな」というふうに思ったら、一番最初のあとがきで「文藝春秋から大河ドラマみたいな漫画を書きませんか?」という誘いがあったというところで始まっているので、「えー」と思って。


青木:

手塚先生といえば鉄腕アトムとか、いわゆる子ども向けのアニメーション、非常に漫画やアニメーションが有名なんですけども、大人向けのマンガもたくさん書いてらっしゃるんですよね、実は。


中島:

言っても「ブラックジャック」とかは大人向けじゃないですか?


青木:

そうですね。あと「バルボラ」とかね、映画化されますけど。「火の鳥」とかね、「ブッダ」。ああいう骨太な作品も非常に。この前も言ったけど日本の漫画、日本の劇画、手塚先生なくしては語れないというね。


中島:

僕はどうしてもこういうテレビの仕事とかをしてるので、もともと映画とかも好きだから、「ジャングル大帝レオ」のあの絵の描き方というんですかね、いわゆるたぶんヌーの大群がうわーっといくときの俯瞰で撮る、今で言うとドローンだったら撮れるんですよ。でも当時誰もその絵を見たことがないのにその視点で絵を描いてるんですよね。フラミンゴがうわーっと飛び立つとか、あれは本当に漫画というところからアニメというものにちゃんと転換期にいらっしゃって、映画とかもをお好きだったと聞くんですけど、その絵の撮り方を漫画の中に取り入れたりアニメの中に取り入れたというところのすごさはあるんじゃないかなと。


青木:

おっしゃったように映画はよく見られていたらしくて、最低でも1年間に365本。


中島:

そうそう、毎日見たという話ですよね。


青木:

有名な話でトキワ荘というアパートにそうそうたる漫画家が集まって、言うなれば自分の後輩たちに対しても「映画はしっかり見るように」と。たぶんあれはカメラワークとか場面の切り取りとか、そういった部分を学びなさいということだったんだろうなと思うんですけどね。


中島:

すばらしい作品なので、もう1回だけ先生がどうしても紹介したいという、この作品は私は知りませんので。次は先生の独擅場になります。独壇場とよく言いますけど、あれは独擅らしいんですよね、本当は。以上です。








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