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執筆者の写真順大 古川

キングダム 始皇帝のさわり【青木裕司と中島浩二の世界史ch:11】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木裕司先生です。よろしくお願いします。

先生、ついに中国です。


青木:

いやー、来ましたね。


中島:

中国といってもどこから手をつけていくかという話があるんですよね。


青木:

本当にしゃべることはたくさんあるんですけど。

中島:

中国四千年の歴史というふうに言われてますから。


青木:

よう言いますね。


中島:

でも中国四千年の歴史、僕が小学校のときに中国三千年の歴史というふうに言ってたんですよ。それが大人になったら四千年、俺1000歳も歳とってないよねって。どこから数えるかという話になっちゃうから、まず基本的なところから、地図見せます?またざっくりした地図で。

青木:

このあたりが中国ですね。


中島:

これ九州です。


青木:

こんなでかくないね。黄河という川から、ちょっと短い川、これは淮河という川ですね。この川を境に、ここから北側を華北。ここから南側、特に長江を中心とした地域ですね、これを江南といって、中国といっても自然環境がこの川を境に、淮河という川を境に全然違うんです。北のほうは基本的に乾燥してるんですよ。ここから南は長江が流れていて、すごく水量豊富で、湿地帯も多くて、森林も多いんです。

中島:

つまり肥沃な土地という、地理がわからないと歴史はわからないんですよね。この川の北と南でちょっと分かれる。


青木:

そうですね。長江流域ももちろん肥沃なんですけども、木が生い茂りすぎていて開発が遅れちゃうんです。黄河の流域って、もちろんこの川の流域はものすごく肥沃な大地なんですね。だけどそんなに木が生えていなかったので開発が楽だった。世界四大文明と言うじゃないですか。


中島:

黄河文明


青木:

ですよね、とナイル文明、メソポタミア、それからインダス文明。いずれも共通しているのはなにかというと、大河の流域、肥沃な大地、温暖な気候、そして適度な乾燥


中島:

適度な乾燥という、それは知りませんでした。


青木:

これ大きいんです。木が生えているというのは大事なことなんだけども、農業をやろうとする人たちにとっては邪魔なんですね。同じインドでもガンジス川が流れてるじゃないですか。あれは水量がめちゃくちゃ豊富で大ジャングルだったんです、流域。

中島:

大ジャングルだから人がなかなか耕作できなくて、入れなくて、文明が起こりにくいと。


青木:

そうですね。中国の場合も一緒で、黄河の流域のほうが先に文明が発展するんですよ。農業が発展して、人口が増えて、漢とか秦、秦の始皇帝の秦ね。あれも基本的にはこのあたりでできてるんです。それから千何百年ぐらいあとに長江流域の開発が本格化して、経済力でこちらが上回るようになる。ずっと基本的には中国のいろんな王朝がありますけども、黄河流域が中心だったんです。


中島:

ただ思うんですけど、中国に関してはいろんな民族がいるわけじゃないですか。北京オリンピックの開会式を見たときに、本当にすばらしい開会式だなって、チャンイーモウ監督かなにかが開会式をプロデュースして演出したんですけど、あのときに、言ってみれば中世の産業革命と言われる活版印刷だとかなんだかんだも、実は中国のほうが先なんだよみたいな主張もしてたし。

青木:

「ほんまはワシや」っていうね。ちょっと大人げなかったけど、あれ。


中島:

そんなことをやってたし、それにひとつすごかったなと思うのは、実はいろんな民族がいて、それで中国は成り立っているんだよというところを見せた。中国四千年の歴史って言いますけど、殷、周、秦、漢みたいなところで始まる、今は夏という、夏と書く王朝があったということですけど、基本的には結構いろんな民族がいるんですよね


青木:

そうですね。ただ中心を占めるのはいわゆる漢民族と言われる人たちですね。


中島:

漢民族は漢民族なんですね。


青木:

今の中華人民共和国の人口比率でいうと90%以上が漢民族です。たとえばこのへんを中央アジアと言いますね。このあたりにはトルコ語をしゃべりイスラム教を信仰しているウイグル人と言われる人たちがいる。モンゴル高原、ほとんどはモンゴル共和国なんですけども、モンゴル国ですけども、一部が実は中国の領土で、このあたりにはモンゴル系の人たちですね。


中島:

今そういう人たちを弾圧しているといって、ものすごい問題になってる、これは世界的に非難されていますよね


青木:

どうも実際にそういうことが行われているようですね、特に中央アジアではね


中島:

新疆ウイグル自治区というふうに言われますけれども、しゃべっている言葉も違えば文化も違うし、歴史的な成り立ちもまったく違うけれども、国土が広がっていって、中国という、中華人民共和国という国内になっちゃってるから、統一していくための教育だとか。

青木:

昔のたとえば1300年ぐらい前に繁栄したいう国がありますけども、あれもものすごい広大な領土を支配していたんです。


中島:

遣唐使の唐ですよね。


青木:

そう。漢民族以外の民族もたくさん支配領域に加えたんですね。ところがそういった人たちの支配は非常に緩やかで、基本的に君たちの伝統、習慣、宗教、言語、好きにやってくれと。税金さえ払ってくれるんだったらあとは好きにやってくれという非常に緩やかな支配が中国の歴代王朝の実は伝統だったんです。今、新疆ウイグル自治区なんかでイスラム教に対する弾圧とか、トルコ語をしゃべらずに中国語を使えとか、あれは実を言うと中国の歴史の中ではかなり異質なんです。僕は中国の伝統に反するんじゃないかなというふうにすごく思ってるんですけどね。


中島:

でも今習近平体制がちょっとそういうふうな感じになっている。


青木:

そうですね。ちょっとあれはいけないですね。さらに言っておきたいのは中国、今は豊かさを求めて頑張っているじゃないですか。もともと豊かなんですよ。

中島:

資源があって、国土が広くて。だってもともと中国なんてそれ以外のところのことはなにも知らなくても国でやっていけたから、いわゆる国の中の覇権争いがずっと行われていたということでしょ?


青木:

それ以外の地域ってどうでもよかったんですよね。中国人にとってはこの地域がひとつの彼らにとって世界。まわりはみんな野蛮人、あるいは宇宙人。そんな感じですよ。


中島:

夷狄というふうな言い方をします。夷という、征夷大将軍の夷。あれは自分たちがよくわからない野蛮な人たちということでつけた文字で。


青木:

一方で彼らの独特の発想で中華思想、中華、料理の名前みたいになっちゃうんだけど、あれはどういう意味かといったら、「俺たちが世界のセンターだぜ」って。

中島:

「中」ってそういうことですか。


青木:

華は華。「俺たち世界のセンターで世界の華だぜ」となるとまわりはみんな野蛮人。しかもその野蛮人も分類するんですよ。モンゴル高原あたりにいる遊牧民に対しては北の野蛮人という意味で北狄。西の野蛮人に対しては西戎とかね。朝鮮と日本、これは東夷ですね。南のほうの野蛮人は文字通り南蛮。南蛮漬けの南蛮です。


中島:

それを日本が違う意味で使ったということですよね。


青木:

本当は自然環境もいろいろあって、それぞれいろんな生活様式があったんですが、その中国を今から2200年前にあの始皇帝という人が統一をするわけですね。


中島:

秦の始皇帝


青木:

漫画で有名ですけどね。

中島:

『キングダム』ですよ。いろんな国があった中で、ついにこの強大な国土を統一する人が現れた。

青木:

それまで中国の君主って、キングね。王だったんです。ところが、「俺はこれだけの地域を支配した」というので、新たに皇帝という称号を作ったんです。


中島:

僕も項羽と劉邦という司馬遼太郎さんのあれを読んで「えー」って。結局王というものじゃ自分を表せないという、自分のプロデュース能力があったという。

青木:

なかなかキャッチーな称号を作りましたよね。


中島:

知らしめる。結局自分が派遣するんだけど、派遣したあとに自分がそういう称号を名乗るということを、いろんな人たちに知らしめるために国の大インフラを整備していくんですよね。


青木:

道も作るしね。


中島:

道を作って、自分の顔を見せに行脚するんですよね。行脚してる途中で具合が悪くなって亡くなってしまってという。


青木:

よくこれも生徒から質問されるんですけど、皇帝と国王ってなにが違うんですか?ってよく聞かれるんですよね。ヨーロッパにも皇帝と言われる人、エンペラーとかカイザーとかいますよね。基本的に皇帝と名のつく君主というのは世界の支配者、もしくは世界の支配者を目指す人。確かに世界史の教科書に「秦の始皇帝は中国を統一しました」って書いてあります。ただ、彼は中国を統一したなんて思ってないです。さっき中島さんがおっしゃったように、世界を支配したと。始皇帝、都の咸陽という街がこのへんにあるんですけども、彼が支配したエリア以外の地域は今の僕たちの感覚でいうと宇宙なんです。

中島:

もう違うんですよね。別世界なんですね。



青木:

別世界。当時の始皇帝にとって朝鮮や日本に住んでいる人たちって宇宙人の感覚なんですよ。世界全体を支配したすごい支配者だ、これに対して王という君主の称号、これは地域の支配者。王によって支配された限られた領域を国と言うんです。


中島:

僕たちが国と言っているのは地域なんですよね。そういうものなんですよね。定義づけというふうに言ったほうが良いかもしれませんね。


青木:

その秦の始皇帝が皇帝を頂点とした支配体制を作っていって、これがこのあとのいろんな王朝のモデルになっていくわけですね。

中島:

ただ兵隊としても出なきゃいけないし、税金も取るし、その税金でインフラ整備をしていくんですよね。これが大変なことで国民が苦しむ。


青木:

ちょっと急激にやりすぎましたね。20年、、、15年かな、それで滅んでいくんですよね。


中島:

たかだか15年で滅ぶんですよね。

青木:

ただそれがこのあとの国づくりのモデルになっていくというね。


中島:

みんなそれを真似するということでしょ?


青木:

一時は中華人民共和国の中国共産党の毛沢東もちょっと参考にしたらしいという話もあります。

中島:

そんなことを秦の始皇帝って考えたんだなって。


青木:

ですよね。中央集権体制という言葉があるじゃないですか。まさしくそれを最初にやったのはこの人です。


中島:

世界史的に初めてやった人ですね。




青木:

と考えて良いでしょうね。


中島:

ここから中国の思想が始まっていくんですよね。


青木:

いわゆる我々が中国という言葉でイメージするものの原型がこのあたりから出てきていますね。秦の時代にいろんなモデルが作られて、それを安定そして発展させたのが漢の時代。漢という言葉自身が中国の代名詞じゃないですか。


中島:

漢字の。

(チャイムがなる)……ここからが盛り上がるのに。中国なんて四千年の歴史、俺が小学校のときは三千年と言ってたんですけど、俺1000年も生きてないですけれども、髪の長さが何キロとか、ヒゲから髭が何千丈とか、盛りすぎる国のきらいはありますよね。


青木:

でもそれをやっても、それでも表現できないスケールがありますよね。


中島:

やっぱり中国ってそうですか。


青木:

だいたい中国で一番は世界で一番ですね


中島:

やっぱりそう思いますか。


青木:

思いますね。中国には敵わない、基本。だからこそ世界のルールを守ってもらいたいんですけどね、この国には。


中島:

この言葉で今日は締めないとダメです。終わりませんから。

大人の世界史チャンネル、ぜひ登録よろしくお願いします。








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