上総広常(上総介広常)はなぜ死ななければならなかったのか ー上総広常の”使い捨ての駒”ー 【誰も得しない日本史 by のぶた】

更新日:4月29日

大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で、上総広常がどうしてこうなったのか、源頼朝の視点を中心に見てみます。


上総広常は、かつて源頼朝の父親の源義朝に従って、保元の乱と平治の乱に参戦したことがありました。

相手はもちろん、平清盛たちです。


平治の乱に源義朝たちは敗れました。

その結果、いろいろあって頼朝の父義朝は殺され、いろいろあって源頼朝本人は14歳(数え年)伊豆に流されました。今なら、中学生になるかならないかといった年齢のことでした。

小学生頼朝ボーイの視点で見れば、田舎坂東武者が役立たずだから、父親が殺されるハメになったということです。


こうして、頼朝は平氏系坂東武者(伊藤・北条たち)に監視された流人生活を送ることになりました。結果的には30代半ばまで、20年間もです。

一方で、上総広常は平家方に降り、上総権介として地方で力を蓄えていました。ちなみに、上総氏はそもそも桓武平氏、平忠常の末裔です。『国史大辞典』などには「平忠常」で項目がたっています。

頼朝視点で見れば、自分が田舎で人生のいちばん大事な時期を20年も流人生活をしている間、上総介広常は、父親の家人だったくせに平氏に詫びを入れて、地方役人にも任命されて、のうのうと優雅な地方大親分生活をしてやがったヤツということです。


そんな上総介広常は、坂東最大級の勢力を引き連れて源頼朝に従ってきましたね。

大河ドラマでは、上総介広常は頼朝につくかどうかを、自分の意志で決めることができる人物のように描かれていますが、

実は、上総広常はその前年に、上総の国司となった平氏の有力家人藤原忠清と対立して、平清盛から勘当されていました。上総広常は、行き場を失っていたのであり、このままでは先細っていくか、平氏に潰されるしかなかったのです。

当然、頼朝もそのへんの事情は知っていたはずです。

坂東最強勢力は魅力的だけど、頼朝から見て、とくに上総広常に好感をもつ理由などなく、信用する材料もないんです。


さらに、上総広常は、ドラマではずっと頼朝にタメ口を聞いていたように、頼朝に対してへりくだった態度を見せません。ドラマでは、これを田舎のオヤジの素朴さのように描いていましたが、『吾妻鏡』や『愚管抄』などには上総広常が頼朝の権威をないがしろにするかのような態度をとっていたことが描かれています。

頼朝視点から見れば示しがつかないわけです。


ここで今回の事件へとつながる、御家人の反乱計画が始まります。

あーがこーで、そーなって、上総広常は反乱計画を引っ張ります。反乱に加わった御家人たちは、みんな上総広常が言ったことには納得したし、従いましたよね。

あーがこーで、そーなっているので、この様子を源頼朝は知っているわけです。


上総広常を最初から信用していない頼朝の気持ちになって、上総広常の考えと危険性を推測してみましょう。


まず、上総広常は坂東最強勢力なので、頼朝の“味方になってくれるなら”とても心強いけど、頼朝の味方にならなかったら、頼朝の全兵力をぶつけても勝てないほどの敵になる。


しかも、上総広常がリーダーシップをとれば、坂東武者のほとんどがノリノリで自分に反抗することまでも、今回の事件で思い知った。

源頼朝にとって、坂東最強勢力上総広常は上総の勢力だけでなく、坂東武者の多くを引き連れて自分を見捨てることのできる人物です。


次に、上総広常にとっては、平氏に対抗できるなら、従う相手は別に自分(頼朝)じゃなくても、甲斐源氏の武田信義でも、木曽義仲(源義仲)でもいいはず。

今は従っているけどいつまで従っているか分からない武田信義か、すでに敵となった木曽義仲のどちらかに上総広常がつけば、坂東の御家人もぞろぞろとそっちにつくし、もう源氏の棟梁にはなれない。

てか、死ぬ。


上総広常にとって、自分(頼朝)は”使い捨ての駒”なんじゃないか?


これは、頼朝が疑い深いとかそういうことではなく、現実です。

実際に、みんなのブラザー宗時はそう言っていましたし、北条時政も三浦義村も、何度も頼朝を見捨てようとしましたね。

とくに、今回の事件の前に、北条時政が感情にまかせて実家に帰った姿を見てしまったのも、頼朝的には大きいと思います。その時政は、事件の時点でも戻ってきていませんし、今後戻ってくるかどうかはこの時点では分かりません。

自分の妻の父親、つまり義父でも、メンドクセーって理由だけで自分を捨てて去っていったんですよ。


「坂東武者ってのは、そーゆー時政のような感情的な連中なのか!? なにか小さなきっかけでも、上総広常とかも去っていくかもしれない」というのが、源頼朝の思いでしょう。

しかも、これ全部思い過ごしじゃないし。

ついでに言えば、ドラマで扱う時代以降の歴史は、源氏が”使い捨ての駒”だったことを示しているかもしれません。


上総広常(もしくは坂東武者)の使い捨ての駒にされる危険性から逃れられない頼朝は、今回の事件を利用して、自分にもっとも利益がある(と思った)決断をしたのでしょう。


上総広常を”使い捨ての駒”にしようとしていた頼朝と、

源頼朝を”使い捨ての駒”にしようとしていた坂東武者のつばぜり合いのなか、

ドラマでは(、もしかしたら史実でも)、頼朝のことが好きで、”使い捨ての駒”にしようとは思っていなかった上総広常があのような結果を迎えることになったのです。

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