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Q&A

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第一次大戦以前のアメリカ合衆国の対外債務について

質問:「第一次世界大戦以前におけるアメリカ合衆国の対外債務はどんな用途に使ったの?


まず、第一次世界大戦以前、アメリカ合衆国は「債務国」でした。

そのうえで、第一次世界大戦後に「債権国」となったアメリカ合衆国に投資された「対外債務」はどのよう使われたのかというのが、この質問の意図になります。

(質問の前提となる歴史については、青木先生の『実況中継第4巻』75ページを参照)


この質問を言い換えると、「諸外国による対米投資の内容がどうだったか?」ということになるでしょう。

アジア諸国などの対米投資もあるかもしれませんが、とりあえずヨーロッパ諸国の対米投資に限定します。


参照した論文は、岡田賢一「第一次大戦前におけるアメリカの海外投資」(京都大学経済学会『経済論叢』第78巻第3号、p53~54)。

https://core.ac.uk/download/pdf/39261420.pdf


 アメリカは、独立から一九世紀中葉に至る間、その経済的発展を欧洲先進諸国の投資に依存したことは周知のとおりである。このいわば外資受入国たるアメリカが、すでに一九世紀末からいかにして海外投資をおこないえたかを究明するにあたり、一応これと対照をなすこれら諸外国による対米投資の実情に簡単にふれておこう。対米投資額の推移は、前掲第二表〔補注:52ページ「アメリカの国債投資状況〔1843~1914〕」〕の示すとおりである。これらの投資内容は証券投資が圧倒的な比重をもち、例えば一八六九年の純投資額一四億六五五〇万ドルについては、合衆国債一〇億ドル、鉄道債一億三〇〇〇万ドル、鉄道株一億一三〇〇万ドル、州債一億ドル、鉱業社債および株式一〇〇〇万ドル、都市債七五〇万ドル、土地抵当その他二五〇万ドルである。この構成比重は一九世紀末までだいたい同じである。また債権国別にその比重をみれば一八九九年の三三億ドルの内訳は、イギリス一五億ドル、オランダ二億四〇〇〇万ドル、ドイツ二億ドル、スイス七五OO万ドル、フランス五〇〇〇万ドル、その他であり、一九O八年六四億ドルでは、イギリス三五億ドル、ドイツ一O億ドル、オランダ七億五〇〇〇万ドル、フランス五億ドル、その他である。なお一九一四年における債権国別、種類別構成の詳細は第三表〔補注:p54、対米外国投資(1914年)〕についてみられたい。また直接投資は独立以来おこなわれていたが、主たる対象部門としては、土地所有、貴金属、銅、食品などであり、石油部門へは二O世紀に入ってからはじめておこなわれた


岡田氏の論文にしたがうと、以下のようにまとめられます。

(1)ヨーロッパ諸国の対米投資のうち、主な投資内容は証券投資であった。具体的には、①合衆国債、②鉄道債および鉄道株、③州債、④鉱業社債および株式、⑤都市債、⑥土地抵当など。

(2)なお、証券投資以外について、直接投資の対象となったのは貴金属、銅、食品など。(20世紀に入ると、石油部門にも投資されるようになる)


最後に、アメリカ史の概説書から、主な投資の対象の1つであった鉄道建設に関する文章を引用します。


「建設に巨額の費用を要する鉄道は株式会社方式によって資金を集めた。株式会社は国内のみならず海外からも大量の資金を集め大きな事業をおこなうことを可能にした。株式会社は有限責任制度、すなわち株主は出資額の範囲内でのみ責任を負う制度により、投資家の負う危険を限定することで、彼らの出資をうながした。……株式会社方式は鉄道業のみならず、他の産業分野にも普及し、大企業の発展を促進した。それとともにニューヨーク証券取引所での取引は活発になり、ウォール街はアメリカの金融と証券取引の中心都市として発展した。」(有賀貞ほか編『世界歴史大系 アメリカ史2 ―1877年~1992年―』山川出版社、21ページ)

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