無制限潜水艦作戦②補足説明
第一次世界大戦におけるドイツの無制限潜水艦作戦(青木先生『実況中継4巻』p4)について、2点補足説明します。(長文になってしまいましたが…)
(1)ドイツが無制限潜水艦作戦を採用した経緯について
授業中に無制限潜水艦作戦のメリットに関する質問を受けたので、そもそもドイツがなぜこの作戦を採用する判断をしたのかについて、私も知らなかったので調べてみました。
出典は、木村靖二『第一次世界大戦』(筑摩書房)です。
ドイツ軍は潜水艦の強化作戦を発動したり、国内外の反対を受けて作戦を中止したりするのをくり返すのですが、無制限潜水艦作戦についていうと、①1915年と②1917年の作戦が主たるものになるので、この2つの作戦が採用された経緯に関する記述を引用します。
①「(1914年の)開戦後イギリスはドイツ海軍の予想に反して、近海封鎖ではなく、遠海封鎖でドイツの通商路を遮断し、14年末には北海を交戦区域と宣言して、ドイツ向け商船を厳しく臨検した。フランス海軍が地中海を、イギリス海軍が大西洋側水域を分担する方式も、イギリスの本国海軍力を増強し、制海権を強固なものにした。……15年には、北海におけるドイツに対するイギリスの優位、バルト海におけるロシアに対するドイツの優位、地中海におけるオーストリアに対するフランス・イタリアの優位という関係が固定化して、膠着状態になった。……こうした状況を打破し、イギリスの海上封鎖に対抗するため、ドイツは潜水艦(Uボート)によるイギリス向け商船への攻撃作戦を決定した。大戦前、イギリスの消費食糧の6割近くが輸入されており、それに打撃を与えるのが目的であった。……15年2月、ドイツは、中立国、特にアメリカとの関係悪化を懸念する声を押し切って、イギリス・アイルランド水域(北海)を交戦水域に指定し、航行商船は潜水艦による攻撃の対象になると声明した。」(p91)
②「1916年末、ドイツ海軍軍令部は、無制限潜水艦攻撃で月間60万トン以上のイギリス向け商船撃沈数を5月以上続ければ、イギリスの輸入は4割近く減少する、したがって、たとえアメリカが連合国側について参戦し、ヨーロッパに兵員を派遣しても、アメリカ軍が実戦配備につく前に、イギリスを屈服させることができる、との試算報告書を提出した。……さらに、16年は世界的に農作物が不作で、穀物の備蓄も減少しているとの推測も計算に入れられていた。……この時もアメリカの参戦は必至との指摘があったが、(ドイツ軍参謀次長の)ルーデンドルフは「アメリカなど恐るるに足らず」と一蹴し、1月初め、2月1日からの作戦開始が決定された。」(p122)
(2)ドイツ海軍の潜水艦の性能について
授業では、当時の潜水艦の性能について、かなり低いことを強調して話しましたが、実際はどうだったのか?を調査!
ということで、調べた本は、ウィルモット(イギリスの軍事史研究者)『第一次世界大戦の歴史大図鑑』(創元社)です。
第一次世界大戦当時のドイツ海軍が配備していた潜水艦には、基本的に2つのタイプがありました。
①小型な沿岸用のUBI型
最大速力は7.5ノット、450mm魚雷発射管2本を搭載、乗員は14名
②長距離航行が可能な外洋哨戒用のU5型・U19型(ミッテルU型)
最大速力は水上で14ノット(潜航時は8ノット)、魚雷発射管4本と105mm砲1門を装備、乗員は28名
大戦後半の段階になると、外洋哨戒用潜水艦は北米海域まで航行可能になりました
Wikipediaの記事ですが、第二次世界大戦時の潜水艦(航洋型)の性能も挙げておきましょう。、
速度(水上/水中):23.0kt/7.0kt
兵装:53cm魚雷発射管×6(魚雷×12)、12.7cm連装砲×2、37mm機関砲×2、20mm機銃 水上機1機
乗員:110名
https://ja.wikipedia.org/wiki/U%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%83%88XI%E5%9E%8B
なお、兵器の性能とは別の問題として、第一次世界大戦当時では魚雷はかなり高価な兵器で、よく使われた攻撃手段は艦載砲の砲撃や、相手の船に乗り込んで爆薬を仕掛けるなどの方法だったようです。当時は、そうした経済的な制約もありました。

乗り込むんですね! はえ~。。。