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【ベトナム戦争②】なぜ始まったか?【青木裕司と中島浩二の世界史ch:0028】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。


青木:

お願いします。


中島:

ベトナム戦争を紐解こうひということで、まずベトナム戦争の前にインドシナ戦争でフランスが撤退し、結局そのあとアメリカが入ってくるという1954年の話から今日はやっていきます。


青木:

その1954年にアメリカはどうしたかというと、東南アジアの国々と、イギリスやフランスオーストラリア、ああいった国々を交えて軍事同盟を作るんです、東南アジアで。これがSEATO、Southeast Asia Treaty Organization。ヨーロッパ中心にNATOってあるじゃないですか、あれの東南アジア版です。


中島:

そんなのを作ったんですか。


青木:

東南アジア条約機構といってね。ただ、東南アジアの国々でこの軍事同盟に参加したのはタイとフィリピンだけ。


中島:

結局東南アジアのそういうグループなのに、東南アジアの国が2か国しか入っていないというわけのわからない機構になっちゃっているという、それがまかり通っていたって恐ろしいですよね。


青木:

なんでかというと、タイとフィリピン以外の国々って共産主義者の力がめっちゃ強いんですよ。


中島:

なるほど。自分たちと同じような考え方だったり政治システムの国だけを入れたということですね。ということはなにかがあったときに、そこで一致団結して俺たちは行くぞという準備段階ですね。


青木:

そうそう。


中島:

ひどいな。


青木:

さらに翌年の1955年にアメリカは北部中心のホーチミンの政権、国名でいうとベトナム民主共和国。これを無視して、南部の今ホーチミン市と言っていますけど、旧サイゴン。あの街に別にベトナム共和国という国を作るわけです。ベトナムを分断しちゃうわけ。


中島:

これはすごい話ですね。


青木:

朝鮮半島と一緒ですね。


中島:

ホーチミンに対抗して、誰かリーダーみたいなベトナム人を立ててやったわけですか。


青木:

そうですね、これがゴディン=ジェムという人で、実はフランスもインドシナ戦争をやっているときに、南部中心に操り人形、傀儡国家を作るんです。ベトナム国という国を作って、そこにバオ=ダイという人を立てた。山川の世界史の用語集というのがあって、そこの中にもいろいろ説明があってね。


中島:

教科書と同じ表紙の薄いやつですね、用語集がありましたね。受験のときを思い出した。


青木:

なんと書いてあったかというと「ナイトクラブの帝王」とか。政治はやる気がないんです。


中島:

ということですね。経済的に砂糖を舐めさせて、自分の言うことを聞けと。


青木:

そうそう。さすがにバオ=ダイを使い続けるのはまずいだろうということで、さっき名前を出したゴディン=ジェムという人を立てて、この人はカトリック教徒なんです。アメリカはプロテスタントの国なんだけど、一応同じキリスト教徒。ベトナムって日本と同じで仏教が中心なんですよ。それも大乗仏教なんです。


中島:

日本と同じということ。東南アジアは小乗仏教の国が多いですよね。


青木:

そうですね。タイとかビルマ、ミャンマー、あそこらへんは小乗仏教。世界史では上座部仏教と言ってますけど。


中島:

それでその人を立てて。


青木:

いうなればベトナムを南北に分断して、通称南ベトナム、正式名称ベトナム共和国とアメリカが一緒になって北に対峙すると。


中島:

そこに国境とかが引かれて?


青木:

いや、正式な国境は引かれてないです。国境を引くためにはお互いに国家として承認し合わなくちゃダメでしょ。


中島:

なるほど、北と南が「そこは国だね」といって、「うちはここまで」ということにならなきゃいけないけれども、じゃあお互い認めてないと?


青木:

認めてないです。


中島:

認めてないのに中央政府が2つあるということですよね。


青木:

そう。北緯17度線というラインを中心にぼんやりと勢力範囲が設定されているという感じ。


中島:

税金とかどうなるんですか?


青木:

大変ですよ。


中島:

北がこんな税金、南がこんな税金、住んでいる人たちはどっちに納めれば良いの?って。


青木:

端境に住んでいる人たちは大変ですよね。そういう状況に終止符を打つために1960年、この年にホーチミンたちの支援のもとに、南部ベトナムのジャングル地帯にゲリラ闘争組織ができるわけ。これがいわゆる南ベトナム解放民族戦線。


中島:

これがジャングルの中で、しかもお互いが国家として認めていないということは、一応同じ国という中で内戦していくわけですよね。同じ顔していて、着ている服は違う軍服かもしれないけれども、軍服を着ていない場合もあると。


青木:

多いですよね。


中島:

見たら同じ国の同じ人同士がどっちなのかわからないという。


青木:

となると、どうしても皆殺し政策になってしまうんですね。このあとのアメリカもそうなんですけどね。


中島:

これは大変なことになりましたね。


青木:

60年から南部のジャングル地帯に根拠地を持っている解放戦線と、アメリカに支援された南ベトナム、政府軍との間に戦いが始まっていくわけです。ところが、解放戦線がなかなか負けない。


中島:

どんなに武器を使っても、なかなか戦い方を知っていたらしいですね。


青木:

2つ理由があって、ひとつはジャングルの中に引きずり込むんですね、南ベトナム政府軍を。そしたら地の利を知っている解放戦線のほうが強い。もうひとつ大きな強みはなにかというと、農民たちを味方に引き入れようとした。これは中国共産党と一緒です。ほとんどのベトナムの農民って地主に雇われている小作農。あるいは小さな土地しか持っていない人たちです。地主から土地を奪ってみんなに分ける。これは農地改革とか土地改革とか言いますけど。これをやることによって農民たちの指示をだんだん集めていく。


中島:

これが本当にベトナム戦争の映画、たとえば「プラトーン」とかで出てきますけれども、村人にいろいろ聞くけれども、果たしてどうなのかというのはよくわからない。英語をしゃべれないから、村ひとつ皆殺しにしちゃえみたいな。


青木:

ふうになってしまいますよね。解放戦線の力が強いところはさっき言ったジェノサイド。とりあえず一掃すると。そこで殺戮を展開するわけです。

そういうことをやりながらも、アメリカが支援しているにも関わらず南ベトナムはなかなか勝てないというのにアメリカがだんだん焦り始めて、これはアメリカが直接軍事介入するしかないかなと60年代に入ってから考えるようになったわけです。


中島:

だってもともとはフランスを支援しているということと、共産主義が広がっていくという怖さだけでずっとそんなふうに泥沼に入っていっちゃって。


青木:

そうなんですよね。共産主義が広がっていくことがアメリカにとってどれだけマイナスになるかということよりも、感情的な恐怖が。

これはベトナム戦争だけじゃなくて、戦後展開した米ソの冷戦、資本主義対社会主義、共産主義の対立。多分に心情的な側面ってあるんです。

僕も歴史を勉強して歴史を教えているけども、なんで冷戦って起こったんですか?と言われたら、聞かれたら、なかなか答えにくいんです。


中島:

きちんとした利害のメリットデメリットというのじゃないですよね。


青木:

そうなんですよね。そのへんをしっかりと、たとえば敵対すればこれだけマイナスになる。仲良くなればこれだけプラスになるという損得勘定を経済的なところで計算した雰囲気もないんですよね。そういうことをやる前に「とりあえずあいつらは怖いから」という感じで動いているという印象ですね、僕は。


中島:

ひとつひとつの事柄がうまくいかないと、余計どんどん入っていってしまう。泥沼って本当によく言ったものですよね。


青木:

それが集中的に現れてしまったのが朝鮮戦争とベトナム戦争。結局、さっき僕が米ソの冷戦と言ったけども、親分同士はぶつからないんです。言い方は悪いけども子分たちが戦わされてしまう。


中島:

子分と言いながら自国民同士が北と南で戦うなんて、こんな悲劇ないですよ。


青木:

内戦が一番怖いですね、戦争の中でもね。


中島:

アメリカが介入して、どんなふうになっていくんですか?


青木:

ちょうどその頃の大統領はケネディで、評価は高いというか、人気はありますよね。ただベトナム戦争に関してはアメリカの本格的軍事介入のレールを敷いた人というふうな位置づけなんです。


中島:

なるほど。ケネディはベトナムにどんどんのめり込んでいった人ということですよね。


青木:

実際にアメリカの兵士たちが南部のジャングル地帯で解放戦線と直接的にぶつかり合う前に彼自身が暗殺されてしまうんです。副大統領から昇格したジョンソンさんがケネディさんの敷いた路線を継承して、ベトナムに本格的軍事介入を始めたわけです。


中島:

僕、開高健さんの「輝ける闇」という本を読んだんですけど、これがまた難しいのは、北と南がガチンコで戦っているんですけど、実際に戦っている南ベトナムの人たちだって、北といろいろ情報交換しながら、アメリカもかなり南ベトナムに関しては疑心暗鬼だった部分があるみたいですね。


青木:

さっき中島さんがおっしゃったけども、特にアメリカにとっては、誰が本当の味方で、誰が本当の敵かってよくわからない。これはベトナム戦争が終わったあとにわかったんだけども、実際に南ベトナムの政府もお役人たちの中にいわゆる解放戦線、あるいは北ベトナムの社会主義者のエージェントがたくさん入っていた。


中島:

そうらしいんですよ。それがあの蒸し暑い中で、癒す酒はメコンウイスキーという安酒で、じっとりした中で、開高健さんが実際に従軍して「輝ける闇」という本を書いてらっしゃるので、これを読んだらいかにすさまじい現場だったかという。


青木:

開高さんはいっぱい良いルポルタージュを書いてらっしゃいますよね。朝日文庫から確か本になってると思う。


中島:

それから舞台の「ミス・サイゴン」という舞台がありますけど、博多座なんかは「ミス・サイゴン」ができるようなシステムで舞台を組んだらしいんですよ。最後の最後、ヘリコプターが出てくるでしょ。あれがちゃんとできるようにというのと、北島三郎さんの「まつり」のときのあれが出てくるようにというので、ちゃんと舞台設計をしたと。


青木:

えー、「ミス・サイゴン」ありきだったの?


中島:

そうです。「ミス・サイゴン」は必ず舞台役者の人たちは1週間ぐらい、最初にベトナム戦争の講義を受けて、それでそのあといろんなみんなディスカッションをして、1か月ぐらいずっとやって、そこから役作りに入っていくというものなんですよね。


青木:

これ授業で言ってやろう。


中島:

本当に「ミス・サイゴン」を見ても、ドキュメンタリーじゃないし、今やっている舞台だけれども、役者の人たちがベトナム戦争のなにを考えて、最後の最後、あのヘリコプターがドーンと出てくるときの、次回ベトナム戦争が最後どんなふうになって終結するかと。


青木:

最後まで行けるかな。


中島:

わかりました。3回目、お届けします。








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