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【漫画に描かれた歴史②】忍者武芸帳・カムイ伝【青木裕司と中島浩二の世界史ch:0064】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


動画版:【漫画に描かれた歴史②】忍者武芸帳・カムイ伝

中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。


青木:

お願いします。


中島:

漫画で歴史を見てみようとかということで、先生の趣味みたいなんですけど。


青木:

すいません。


中島:

白土三平さん。


青木:

代表作品の2つですね。「忍者武芸帳」と「カムイ伝」。


中島:

いわゆる日本の忍者というのがどういう役割を果たしたかというところですよね、戦国時代に。


青木:

しかも単に幕府や武士たちの手先として活動するだけじゃなくて、歴史そのものをひっくり返すようなね。


中島:

しかも実際にはわかってないことがたくさんあるでしょ。だっていわゆる間者といって水面下でいろいろする人たちなので、いまだもって忍者に関しては歴史をいろいろずっと調べまくってる人がたくさんいますよね。


青木:

なんだけど残念ながら記録を残してないんですよね。


中島:

なぜ残さないかというとそれは自分たちのアリバイを残さないというのと同じなんですよね。


青木:

「忍者武芸帳」のほうが戦国時代、天才忍者の影丸というのが主人公で、著作権の関係で中は見せられないんだけど、イメージは香取慎吾君。あんな感じの顔ですよ、主人公の影丸って。これがもともと武士たちに使われる身だったんだけどもそれが嫌になって次々と農民一揆を主導していく、武士の世そのものを終わらせると、言うならば革命ですね。そういったことを思考するスケールのでかい忍者なんです。


中島:

それって白土三平さんのまったくのフィクションですか?


青木:

まったくのフィクションです。実は白土三平さんのお父さんというのがプロレタリア画家と

いう労働者の姿みたいなものを描き出すという、そういう立場の絵描きさんだったんです。


中島:

ということは思想的にお父さんの思想をかなり受けているということですね。


青木:

単行本で8巻ありますけどなかなかおもしろいですね、ダイナミックですね。


中島:

それは歴史ということよりもそういう一揆を企てるというところの社会変革、革命という。


青木:

そんな感じですね。それに結城重太郎という剣豪が出てきて、その2人が関係を持ちながら展開していくんです。


中島:

忍者の話でありながらどちらかというと社会という感じですね。


青木:

基本的にはそうですね。そういうテーマをもっと深掘りしたのが「カムイ伝」という作品。


中島:

これも忍者じゃないんですか?


青木:

一応忍者は出てくるんですけども実は主人公は農民の正助というやつ。どちらかというと題名になっているカムイ、天才忍者なんですけども、カムイはどっちかというと狂言回しという感じですね。実際に農民たちが自分たちの幸せのために努力をする。それを武士たちが搾取すると、それに対してどのように立ち向かっていくのかという話なんです。僕実はこれ大学生になったとき。きっかけはなんだったかというと、大学に入って西洋史の授業で志垣嘉夫先生という先生が「突然だけど、カムイ伝を君たちは読んだか?読んでいない人はぜひ読みたまえ。あれは歴史だ」と言うんです。農民たちの活動が広がっていって経済関係が変わっていって、それが武士の世の中をゆっくりと浸食していく。「資本論が描いた世界だよ」というのをおっしゃったんです。「へー」と思って。


中島:

本当ですか。


青木:

友達に持ってるやつがいて、これは文庫版なんですけども、コミックの単行本の形をしたやつを18巻だったかな、借りてきて、寝食を忘れて読みましたね。おもしろいのはサスペンス仕立てになっていて、時代はちょうど17世紀の前半で徳川幕府ができた頃、ちょっとあとかな。第三代将軍家光の時代ぐらいですね。徳川幕藩体制が確立する。その頃に東北に日置藩という小さな藩があるわけです。徳川幕藩ってできた頃って自分の意に沿わない藩に対しては改易したり潰したり。しかしこの外様の日置藩に対してはあんまりなんだかんだあってもお咎めをしないと。原因がなにかあるはずだと。実はこの日置藩というのが徳川幕府を揺るがすような大きな秘密を握っている。その秘密がなんなのかということがサブテーマとしてずっとあるんです。一方では日置藩で生活する正助を中心とする農民たちがどのような活動をするか。さらには当時の身分制社会、士・農・工・商・えた・非人という賤民と言われる

人たちが作られるわけです。その非人出身の忍者がカムイなんです。農民たちは賤民たちを差別しながら、一方で正助は非人の娘と恋をする。この身分社会というのをなくしたいと、なくすためにはなにが必要かというのでいろいろ奮闘するんです。


中島:

そんなお話なんですか。


青木:

そういう正助たちが自分たちの農業活動とかそれ以外の経済活動とか、それによって身分の枠を壊していこうとする動き、一方でさっき言った日置藩が持っている幕府を揺るがす謎、これがなんなのか、これが交錯しながら展開していくんですよ。ところどころに説明書きがあって、当時の農業生産の技術はこんなふうでしたとかね。正助が使っている道具はこんなふうなもので。


中島:

そういうところはきちんと。


青木:

説明してくれてるんです。とにかくダイナミック。白土さん自身、デッサン力が非常に高かった人みたいで、農民たちが最後のほうで大一揆を起こすんです。そのときの絵なんて文庫本の大きさだけどゾッとしますよね。僕、画面を開いて絵だけでゾッという気持ちなったのは大友克洋の。


中島:

「AKIRA」ですね。


青木:

はい。街が崩れるシーン。あれと「カムイ伝」の農民一揆のシーンですね。農民たちが後半になって一揆を起こして武士を追い詰めていくんだけども、そのときの雄雄しさというかね。おもしろいのは登場人物の中に夢屋七兵衛という商人が出てくるんです。これは利益を追求する資本主義の権化みたいなやつで、いろんな登場人物が命を失っていく中で夢屋七兵衛だけはしっかりと生き残っていくんです。これは資本主義は死にやしまへんでと。


中島:

考えさせられる部分は今でもありますよね。特に格差が広がっている時代というのは、身分制度はないにせよ、いわゆる層の往来がなくなれば社会は停滞するというふうに経済学では言われるじゃないですか。その層の往来が今かなり停滞していくんじゃないか、未来はというふうに言われているので。


青木:

それに関して言うとバブルが弾けて以降どんどん格差、おっしゃったように身分とまでは言わんけどもその間の往来というのがね。


中島:

いわゆる年収で言うとこれぐらいからこれぐらいの人、これぐらいからこれぐらいの人が、どんどん真ん中の人が少なくなって、その往来がなかなかできにくくなると社会は停滞すると言われますけどね。


青木:

インドにはカーストというのがあって、身分差別システムなんだけども、それに近いものが実は今の日本にもできつつあるという指摘はありますよね。これがおっしゃったように社会を停滞させていると。という中にあってこの作品はやはり読まれるべきではないのかなと。


中島:

わかりました。白土三平さんの「カムイ伝」そして「忍者武芸帳」ということです。また次回。








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