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ユダヤ人の歴史(5)ナチスの迫害【青木裕司と中島浩二の世界史ch:282】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。

 

青木:

お願いします。

 

中島:

イスラエル・パレスチナ、ずいぶんと深まってきましたね。

 

青木:

19世紀の末に再びフランスでもユダヤ人が差別をされる。これに嫌気がさしたユダヤ人の人たちがパレスチナに住処を作ろうと。それをイギリスなんかが利用して今日のパレスチナ問題のきっかけを作ったというのは、私1人でやったときがありますのでそこでもやってるし、2年前もやっていますので、そこでご覧いただきたいと。

 

中島:

2枚舌じゃなくて3枚舌だったということですね。

 

青木:

第一次世界大戦後にいろいろ住んでいるアラブ人の人たちとの間にトラブルが起こる。そして30年代に入ってヨーロッパからパレスチナを目指すユダヤ人の数が激増していく。その背景にはヨーロッパで台頭する反ユダヤ主義、その中心にいたのがヒトラーのナチスだったわけですね。

ちなみに1930年代全般ですね、世界に住んでいたユダヤ人の数、総数がだいたい1600万人ぐらいと言われているんです。そのうちの1000万人がだいたいヨーロッパに住んでいたというんです。ところが先ほど言ったようにドイツを中心に反ユダヤ主義というか、それにユダヤ人のたちは命の危険をも感じるようになったわけです。

一方、そうは言ってもそこまでひどいことはナチスもしないだろうと思っていた人たちは結局逃げ遅れて殺されてしまうことになるんですね。

数字はいろいろ議論はあるんですけども、だいたい定説ではヨーロッパに住んでいた1000万人のユダヤ人のうち600万人が殺されると。

 

中島:

これもとんでもない数ですよね。

 

青木:

ヨーロッパ各国にそこそこのユダヤ人の皆さんが住んでいるんですけども、特に人口比で多かったのは、絶対量も多かったのは東ヨーロッパと旧ソ連領なんです。特にポーランドなんていうのはアウシュビッツという絶滅強制収容所も作られたので有名なんですけども、ポーランドにもだいたい人口の15%から20%ぐらいはたぶんユダヤ人だっただろうと。

中島:

ただ国籍はそれぞれの国にあるわけですよね。



青木:

そうです。

 

中島:

自国民ということでもあるわけですよね。

 

青木:

そうです。だけどヒトラーの人種理論によるとユダヤ人というのは基本的には我々ドイツ人ではないと。ドイツ人とは違う。さらにそこに違うだけじゃなくて優劣を持ってくるんです。「我々ドイツ人が世界に冠たるドイツ人。世界で一番偉い。他の連中はどうしようもない。中でも一番ひどいのがユダヤ人で、その次にひどいのがスラブ人。東ヨーロッパに住んでいるスラブ人だ」と。彼らははっきり言って人間以下の存在だから我々が利用してやれば良いぐらいの存在であると。彼らが持っている土地は全部我々のもの。

ちなみになんでポーランドをはじめとする東ヨーロッパにユダヤ人が多かったか。これは西ヨーロッパで差別されてきた歴史があったからなんです。



中島:

それで東のほうにということですか。

 

青木:

16世紀になっていわゆる大航海時代というのが始まっていくじゃないですか、スペインとかポルトガルを先頭に。すると今日でいう西ヨーロッパの経済が活性化するんです。商工業が発展して人口が増えて、穀物が足りなくなるんです。穀物の値段がガンと上がっていくんです。これを見ていた東ヨーロッパの貴族たちが「今穀物をたくさん作ったら儲かる」と。ところが西ヨーロッパに比べて東ヨーロッパって自然環境が寒くて厳しいので、西ヨーロッパみたいになかなか人口が増加しないんですね。労働が不足した分を誰で補おうとしたかというとユダヤ人なわけ。「西ヨーロッパで差別されてる皆さんこっちにいらっしゃい」と。特にポーランドなんかは比較的宗教に寛容で、ユダヤ教徒に対しても当初は差別しなかった。しかも読み書きができる人が多いじゃないですか、ユダヤ人って。ポーランド人の貴族が「これは良い人たちがやってきてくれた」と。当時ポーランドは強くて、今のウクライナの西半分まで支配していたんです。ウクライナといえばめちゃんこ土地が豊かなので。

 

中島:

穀物地帯ですよね。

 

青木:

そこを支配したポーランド人たちがウクライナの土地なんかを管理するためにユダヤ人を利用するんです。そんなこともあってポーランド、そしてウクライナにもユダヤ人はたくさんいた。ちなみに今大統領をやっていらっしゃるゼレンスキーさんはユダヤ人ですよね。彼はどっちかというとウクライナの東部かな、出身で、ルーツはユダヤ人です。

そういったことで、ナチスの時代に、特に1941年に独ソ戦が始まると、ヒトラーたちが特別行動隊という、ユダヤ人なんかを殺すためだけの部隊なんですけどね。

中島:

なんでそんなことをしたんですか?だって自分が戦争している忙しいときにそんなことをやりますか?

 

青木:

理由はいろいろあるんだけども、ひとつは彼らが敵と通謀するんじゃないかということと、大きいのは自分たちが見下している人たちをこれを機に一掃してしまおうと。特にユダヤ人に対する虐殺が加速化するのはドイツが戦争で劣勢になってからなんです。ソ連と戦争を始めた最初の半年間は調子が良かったけども、どうもそれに勝てないと思い始めたぐらいから、じゃあ今自分たちが支配している領域内のユダヤ人だけでも一掃しておこうと。だからどっちかというとドイツが劣勢になってから虐殺が加速化していくんです。ほとんどそれこそ占領地域のユダヤ人に関してはほぼ根絶されているという感じですね。これは女性子ども関係ないですからね。

ただそれを実際に殺している親衛隊の隊員たち、ナチスの思想を注入された隊員たちといえども、毎日毎日自分の手で、それこそ子供まで殺すとなると精神に異常をきたす人が出てくるわけです。そういった報告が上がってくるので、抹殺に携わっている親衛隊の隊員たちのストレスを軽減するためにガスが利用されるようになるんです。

私もアウシュビッツに行きましたけど、ガス室が復元されていますけども、そんなに広い部屋じゃないんですよね。そこに何百人かのユダヤ人を入れて、チクロンBという毒ガスを放り込んで、それを吸い込んじゃうと窒息するらしいんです。息ができなくなってみんな胸をかきむしって死んでいくと。そういうことをやって1000万人のユダヤ人、ヨーロッパのユダヤ人の600万人を抹殺しちゃうんです。

そういったこともあったので第二次世界大戦が終わったときに、特にヨーロッパの人たちの同情がユダヤ人に集まっていくということがあると。そういう中でパレスチナに国を作りたいと思っているユダヤ人をアメリカもソ連も支援すると。今日のイスラエルの原型ができあがっていくわけです。

ということで、今現在イスラエルの領域、国際社会が認めている領域というのはこの青で示した部分。オレンジで塗った部分というのがパレスチナ人の自治区域であるヨルダン川西岸地区とガザ地区。ただこれももともとはもっとパレスチナ人の領域は広かったんです。1948年の第一次中東戦争、別名パレスチナ戦争のときに国連が示した分割案よりも広いところをイスラエルは支配をしてしまうと。

建国当初のイスラエルの人口はだいたい65万人ぐらい。そんなもんです。現在どれぐらいかというと、イスラエル全体で850万から900万と言われているんです。そのうちの700万人ちょっとがいわゆるユダヤ人。もちろんイスラエルに生まれて育った人たちもいるけども、イスラエルが建国されたあとに世界から集まってきたユダヤ人の数も200万人以上ですね。これで人口はどんどん伸びていくわけです。ただ、領域内にはいわゆるアラブ人のイスラム教徒の皆さんも現在でも20%、だから200万人近くいるんですよ。150万から200万人ぐらい。

 

中島:

それはイスラエルの国の中でということで、パレスチナじゃないということですよね。ガザ地区とヨルダン川西岸というところじゃないところで、イスラエルという国の中でということですよね。

 

青木:

そうなんですよ。イスラエルという国ができたときにユダヤ人の支配は嫌だといって、イスラエルの支配領域から出ていった人たちのことをパレスチナ難民というわけです。なんだけど、イスラエル領内にアラブ人がいないわけじゃないということです。しかもこれも2年前のチャンネルのときに言ったけど、皆さん仲良く暮らしてるんですよね、まあまあ。

ちなみにイスラエル国内のアラブ人の人たち、参政権が制限されているわけでもないし、イスラエルの国会の中にはアラブ人の利害を代表する政党の国会議員がいますからね。

 

中島:

そういう人たちは今の現状ってどう見てるんでしょうね。

 

青木:

ものすごく苦しいと思いますよ。それこそ板挟みじゃないですかね。ただ、イスラエルという国の国柄自身を見てみると、一応議会制民主主義なんです。言論の自由なんかも認められているし、経済も発展しているから、少なくともまわりのアラブ同胞がいるたとえば他の国々よりは生活水準は高いと言われているんです。基本的にはイスラエルのユダヤ人と同じ権利を認められている。違う点はいくつかあって、一番大きな違いは徴兵の義務がないんです。

さすがにまわりのアラブの国々と戦争するときに領内に住んでいるアラブ人を前線に立てる。果たして彼らが戦ってくれるかどうか。そこはやっぱり信頼できないというか、一方で戦わせるのはかわいそうだというのもあるかもしれないけども、徴兵の義務はないらしいです。ただ、それ以外の国民健康保険の制度とか、あるいは教育、教育はタダですもん、イスラエル。日本も義務教育はタダだけども、日本の義務教育って今9年間でしょ。イスラエルは15年なんです。高校と幼稚園も1年か2年は確か大丈夫なんです。教育に関しては全部国が面倒を見ると。

これはまわりが敵であると思われていたアラブの国々に囲まれているので、それに立ち向かっていくためには国民のレベルを上げていく必要性があると。だから教育にはめちゃんこ熱心ですね、イスラエルって。チャイムが鳴りましたね。

 

中島:

チャイムが鳴りました。では次回です。









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