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ハマス・イスラエル戦争(4)ハマスはなぜ攻撃したのか?【青木裕司と中島浩二の世界史ch:274】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。

イスラエルとパレスチナの話、4回目です。

青木:

2000年代のパレスチナがどういう状況なのか、前回に続いての話なんですが、2000年代、特に2005、6年の時期にいわゆるパレスチナ人の中で内部対立が激しくなってくると。ガザ地区を拠点にしているいわゆるハマスとヨルダン川西岸地区に拠点を持っているPLOの主流派ファタハ。その中心人物がアラファトさんだったんですけどね、アラファトさんが亡くなっちゃったので、アッバスさんという人が現在に至るも指導者として君臨をしているんですけども。アッバス議長ね、もう80歳を超えてますけどね。

このハマスとPLO・ファタハとの間での対立が激しくなっていく。対立の構造は非常に単純で、イスラエル国家との共存をPLO・ファタハはOKするんですね。これに対してハマスの人たちはイスラエル国家との共存は考えられない。パレスチナからイスラエルを殲滅する、追い払う。そういったことを訴えている。

2006年にパレスチナ自治政府で行われた総選挙でハマスが勝利をするんですね。


中島:

そうなんですよね、これが国際社会としては意外と「あ、そうなの?」というびっくりした結果だったかなという。


青木:

国際社会もびっくりしたし、当然みんなPLO・ファタハが優勢だろうと思っていたんですよ。アッバスたちが勝つだろうと思っていたんです。


中島:

だから選挙やって良いよという話になったんですよね。


青木:

そうそうそう。ところが蓋を開けてみるとハマスが勝利をした。投票した人たちも実はびっくりしていたという話があってね。


中島:

そういう話もありますけども。


青木:

というのもパレスチナ自治政府、国家としてはまだ完全に認められていないけども、国際連合なんかには議席を持っているんですね。そこに住んでいるパレスチナ人の生活が苦しいというので世界中から支援が集まってくるわけですよ。日本なんかも支援をしています。ところがその支援の一部がどうもPLOの幹部たちの手に入ってしまうと。一部汚職がかなり蔓延しているのではないかと。

中島:

この話も実はあるんですよね。一説によるとハマスの人たちはほぼ汚職がなかったということを。


青木:

少なくとも投票した人たちはそういうふうに認識していたみたい。かと言ってハマスはイスラエルとの共存は認めないというので武力闘争を続ける。それを嫌悪する人たちもたくさんいたんですよ。ただ現実のパレスチナ自治政府の主流派であったPLOの汚職は許せないので、お灸をすえるぐらいの気持ちであの選挙に臨んだのではないかと言われているんです。だからハマスが第一党になったとき、「え?」という感じだったのは事実なんですよね。


中島:

そうらしいですね。


青木:

それを国際社会が認めなかったんだね。


中島:

結局選挙をやって良いよといって、「やったらやったでこういう結果になったけど、そんなことになったんだったらチャラね」みたいな、これもまた。


青木:

それはおかしい。


中島:

言っちゃいけないことですよね。

青木:

ハマスは当然怒るわけですよ。結局翌年の2007年にPLO主流派とハマスとの間に武装衝突があって


中島:

これが本当に残念ですよね、同じパレスチナの人同士がという。


青木:

これはガザの戦闘といって、結局これでパレスチナ人の居住地域、ヨルダン川西岸地区はPLO主流派、そしてガザ地区は現在に至るもハマスが実効支配をするということになったわけですね。なんべんも言っているようにハマスはイスラエル国家との共存は認めないというので、イスラエル政府もこの狭い地域ですけど、ガザ地区の周囲を取り囲んで経済的な封鎖をすると。医療品も入っていきにくいし、食料から電力・水の供給も制限するという中で、このあたりからガザのことを「天井のない監獄」と。


中島:

なんというか、対立とかそういうふうなことばかり普通に話をしていると、「そうだよな、水道どうなってんの?」とか、「電気どうなってんの?」という、そういう話になって、そういう生活インフラをそういうふうに、いわゆる兵糧攻めみたいなものですよね。そうなると余計に追い詰められるかなと思って。


青木:

そうなんですよ。結局そういう状況を打開するためにハマス側からのロケット弾を中心とした散発的な攻撃というのが、実効支配をした2007年から実は始まってるんですね。それに対してイスラエル軍も当然ながら反撃をすると。

2007年から2008年の間に通称ガザ紛争というのがあって、これでパレスチナ側の死者が1300人、イスラエル側の死者、兵士を中心に死者が20人。軍事力の差が大きいのでね。

中島:

全然数が違うんですよね。


青木:

実はそういう中で、これあんまり日本では報道されなかったけども、イスラエル兵士の拉致事件というのが実は起こったんです。ご存知なかったですか?


中島:

はい。


青木:

拉致事件自身が起こったのは2006年。これはハマスが前線にいたイスラエル兵士、名前がギルラド=シャリートという人なんですけども、当時18歳ぐらいかな、その人を拉致した。彼を拉致したあとでなんと言ったかというと、イスラエル政府に対して「捕まっているハマスの戦闘員、これを釈放しろ」と。

中島:

人質の交換ですね。


青木:

そうですね、人質。ハマス側は1人。それに対してイスラエル側には1000人以上の釈放を要求したわけですよ。当然ながらイスラエル政府はテロ組織との対話は成立しないと言って拒絶したんです。ハマスがどうしたかと言うと、「イスラエル兵まだ生きてるよ。命を助けたいんだったら釈放してくれ」と。何回も何回も言っていたんです。そしたらイスラエル国内でこの捕まった兵士を救えという民衆運動が起こって、それをイスラエル政府も抑え込むことができなくなった。結局2011年に話し合いが成立してイスラエル兵1人に対してハマス側のいわゆる戦闘員1027人、交換されたんですね。

あとで話すつもりだったけども、今回のハマスの攻撃で150数人の、市民が中心ですけど、イスラエル市民を拉致したという話があるじゃないですか。これをやったのはもちろん人間の盾として利用するという目的もあったんだろうけども、このときのギルラド=シャリート拉致事件、この成功体験というのがかなり大きく影を落としてるんじゃないかなと思ったんですよね。

基本的にイスラエル政府というのはいろんなテロ組織との対話を拒絶してきたんですよね。一番有名なのが1972年のミュンヘンオリンピック村襲撃事件、あれも拒絶したじゃないですか。でもこのときはOKしたんですよ。そういうこともやってたんだなと思って、これちょっとびっくりしたんですけどね。

とにかくガザ地区に関してはさっきも言いましたけど天井のない監獄状態で200数十万人の人たちが日々の生活が本当に大変だという状況の中で今年を迎えたわけですね、2023年。このシリーズが始まるときに言いましたけども、ハマスがなぜこのタイミングで攻撃をしてきたか、いくつかの要因があるんですけども、一番大きいのはガザ地区で生活が、ガザの住民の生活が困窮する中、その不満がついにフェンスの向こう側のイスラエル国家じゃなくて、自分たちのすぐ近くにいるガザ地区を実効支配しているハマスに向かっていくんですね。今年の7月に、これは結構大きなニュースになりました。ガザ地区でデモが起こった。誰に対するデモかというと、実効支配しているハマスの人たちに対して「なにもやってくれてないじゃないか、なんとかしてくれよ」と。結局このデモは鎮圧されるんですね。ただ鎮圧の動画なんかも拡散されて、そんなにひどい鎮圧は行われていないんだけども、ハマスとしてはめちゃくちゃ恐怖したみたいなんですよ。このまま行ったら我々ハマスはガザ地区の人たちからも見捨てられる可能性があるということがひとつですね。

もうひとつは去年の11月・12月にネタニヤフさんを中心とする右派および極右の連立政権がイスラエルに誕生したんです。

ネタニヤフさん自身もパレスチナ人のゲリラ組織、テロ組織とは共存できないと。ただなんと言っているかというと、いろんなことを起こさないんだったら君たちの存在を認めてやるよと言ってるんですね。彼の理論で有名なのが、完全に武器を置くんだったら完全なる自治を認めるというふうなことをパレスチナ人の人たちに彼は言ってるんですね。そのネタニヤフさんよりもはるかに強硬な人たちというのがいて、代表的なのがこの人で、ベングウィルという人なんですけども、こういう顔の人なんですけどね。

とにかくイスラエル国家とパレスチナ人の国家は共存できない。パレスチナはすべてユダヤ人のものなんだ、彼らを一掃すると。そういったことを訴えている人たちが閣僚に入っちゃったんですね。これにハマスの人たちが非常に恐怖心を持ったということですね。

チャイムが鳴ったので、次回は今の状況をめぐる国際関係ですね。

中島:

これが結局いろんな国が絡んできちゃってというところでの難しさというものもあるので、結局当事者だけじゃない、もちろん仲裁するためにというところだけれども、それぞれの国の利害とかも絡んできちゃう。


青木:

日本も無関係じゃないので。


中島:

これは本当に。日本はエネルギーという話でアラブの社会とつながっているので。次回、国際関係で見ていきます。








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