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【パレスチナ問題①】起源はイギリスの三枚舌外交【青木裕司と中島浩二の世界史ch:0040】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。

今回からパレスチナ。


青木:

大ネタですね。


中島:

そうですね。なんというか世界の紛争の火種になっているところということですよね。


青木:

70年以上ずっとね。


中島:

なんでそういうふうなことになっているのかというところをきちんと紐解いていかなければ今のいろんなニュースが読み解けないというところになります。僕、一番思うのは、エルサレムというところがあるじゃないですか。エルサレムというところはユダヤ教もイスラム教もキリスト教も聖地なわけですよね。


青木:

そうですね。いろんな意味合いは違いますけどね。

中島:

ということは元を正せば同じという?


青木:

はい。まず3つ宗教の名前を挙げられましたけども、一番最初に成立したのがユダヤ教なんです。


中島:

一番最初にユダヤ教。


青木:

どのへんで成立したかというと。


中島:

ここがサウジアラビアのアラビア半島。


青木:

このあたりで生まれるんです。赤で示していますけど、いわゆるパレスチナのあたりですね。現在はイスラエル。そのユダヤ教という宗教の中からキリスト教が生まれてくるわけです。

中島:

派生するという言い方ですね。


青木:

そういうことです。それから700年くらい経ったあとにアラビア半島にムハンマド、昔はマホメットと言ってましたけども、彼がアッラーという神のお告げを聞いて、それをみんなに知らしめて、いわゆるイスラム教という宗教が生まれるんですよね。

イスラム教徒にとってたとえばユダヤ教徒の経典である旧約聖書。あるいはキリスト教徒にとっての経典である新約聖書。どういう位置づけかというと、あそこの中にも神の言葉は残ってる。アッラーという神様がムハンマドという預言者、英語で言うとメッセンジャーですね、神の言葉を伝えるメッセンジャーを地上に遣わせる前に、たとえばアダムもそうだったし、モーセもそうだったし、イエスも、みんな神が地上に遣わせた預言者だと。その彼らを使って神がいろんな教えを人類に下そうとしたんだけども、ムハンマドに先立つ預言者たちは取り巻きが悪かったり、預言者としての能力が足らなかったりして、十分に神の教えというのが伝わらなかった。というので、最後のそして最高の預言者であるムハンマドが遣わされたと。

もちろんイスラム教徒というのは神がムハンマドを通じて伝えたいろんなメッセージだけじゃなくて、その前に神であるアッラーが伝えようとしたお告げ、そういったものが記録されている旧約聖書、新約聖書もイスラム教徒の経典であるコーランに次ぐ経典として軽んじてはいけませんよと。

中島:

そういうふうに言ってるんですか?


青木:

言ってるんです。教科書には出てこないけど「セム系3宗教」という言い方をするんです。アラブ人もユダヤ人、ヘブライ人も民族的にセム語族といって、言語的には実はルーツが一緒です。先ほど場所を見たように場所的には一緒なんですよ。同じ地域に生まれた宗教なんです。その3つの宗教にとってエルサレムという街がなんらかの聖なる意味を持つと。


中島:

宗教対立というふうに考える人が多いんですけど。


青木:

もちろんその側面はあるんですよね。


中島:

その側面はあるけれども、それにまつわる他のなんだかんだの要素もいろんなことが入ってきちゃってるというところですよね。


青木:

基本的には宗教対立、強調されるんですけども、一応今パレスチナ問題というのがなんで問題になっていたか、そのへんから見ていきたいと思います。

まず簡単にパレスチナ問題はなんなのかというと、さっき言ったようにパレスチナ、これは誰のものなのかをめぐる対立。ユダヤ人のものなのか、パレスチナ人と言われる人たちのものなのか。パレスチナ人というのはここに長年住んできた人々、言語的にはアラビア語をしゃべるアラブ人、そして多くはイスラム教を信仰しているイスラム教徒。このあとの説明でパレスチナ人ということが出きますけども、基本的にはアラブ系イスラム教徒と思ってください。その彼らとユダヤ人がこの地域をめぐって対立をしていると。

じゃあ対立はいつ頃から起きたかというと100年前なんですよね。


中島:

たかだか100年前。100年前というと1900、いわゆる第一次世界大戦。


青木:

大戦中ですね。


中島:

中ということですね。


青木:

さらに結論を言っちゃいますけど、イギリスが悪いんです。

中島:

先生が必ずこれで書いている実況中継で。いわゆるよく言われる二枚舌外交とか、あれは二枚じゃなくて三枚ぐらい。


青木:

本当は三枚なんですよね。とんでもないですよ、イギリス。


中島:

第一次世界対戦でどんなふうなことになっていったんですか?


青木:

前史を少し確認すると、まずもともと、今ユダヤ人と言われている人たちというのがパレスチナに住んでいたんです。

中島:

パレスチナ人もいるけれどもユダヤ人もいたということですね。


青木:

もともとはユダヤ人のほうが多かった。ところが今から2000年ぐらい前に当時あそこらへんを支配していたローマ帝国。ローマに楯突いて反乱を起こして、多くのユダヤ人が反乱に負けちゃって、潰されちゃって、散り散りバラバラになっていくんです。それから2、300年経った頃からあの地域にアラブ系の人たちが移り住むようになった。

7世紀にイスラム教が成立すると多くのアラブ人がイスラム教を受け入れて、パレスチナに住んでいる人といったらアラブ系のイスラム教徒が多数派になる。ユダヤ人はもともと住んでいた場所から散り散りバラバラになる。一部はヨーロッパに住み、一部はアジアに、あるいは北アフリカ、そしてアメリカに。

ところがヨーロッパに住んでいるユダヤ人の間に19世紀の末ぐらいから、もういっぺんパレスチナに国を作ろうという運動が起こってくるわけです。これをシオニズム運動といって、パレスチナにシオンの丘という、ユダヤ人にとってのランドマークがあるんです。日本でいえば富士山ですね。そこにもういっぺん国を作ろうという運動が起こってきた。なぜかというと、これはヨーロッパに住んでいるユダヤ人たちが始めるんだけど、ヨーロッパに住みたくないと。

なぜかというと、19世紀の末に東ヨーロッパやロシアでユダヤ人に対する組織的虐殺が横行するようになる。

中島:

実はユダヤ人というとすぐナチスドイツの話を我々はパッと思い浮かべるんですけど、その前からヨーロッパでは、しかも他の地域でもちょこちょこユダヤの人たちが大変な。


青木:

迫害を受けるんですよね。


中島:

そういうことなんですよ。


青木:

簡単に原因を言っておくと、ユダヤ人というのはキリスト教徒じゃないですよね。ヨーロッパはキリスト教世界なので、ヨーロッパ人から見ればやってきたユダヤ人はよそ者なんです。よそ者だから土地を持つことが認められない。ユダヤ人はなにをやって飯を食っていくかというと、金融業、あるいは商業。ものを運んだりお金を貸したり。これでだんだん経済的な力を持っていく。

するとヨーロッパの多数派であるキリスト教徒が「なんだあの連中よ」と。


中島:

いわゆる自分たちのところにやってきて、商売は繁盛してて、自分たちはなかなかそれがうまくいかない。


青木:

そういった妬みなんかもあって、しばしば迫害の対象になるんです。それが19世紀の後半に横行するわけです。それにヨーロッパのユダヤ人たちが嫌になって、「ヨーロッパなんかあとにしてパレスチナに国つくろうぜ」って。そういうのが前史にあって、第一次世界大戦中の話になるわけです。

イギリスがどういう悪さをしたか。舞台はここですね。ピンクで囲ったところ、これがオスマン帝国。トルコ人が支配する地域ですね。

中島:

大きく支配してましたよね。


青木:

ユニオンジャックのマークがイギリスの植民地ですね。イギリスにとって一番大事な植民地といえばなんといってもインド。第一次世界大戦というとイギリスとフランスとロシアなどが連合を組んで、ドイツ、オーストリア。そしてドイツ、オーストリアの側についたオスマン帝国と戦うわけです。イギリスとして怖かったのは、トルコの力、オスマン帝国の力が大事なインドに向かうこと、これが怖かったんです。

というのでイギリスはオスマン帝国の支配領域の中にいるアラブ人たち。このあたりはアラブ人がたくさん住んでいますね。オスマン帝国というトルコ人から支配されている。そのトルコに支配されているアラブ人たちに近づいていって、「お前ら独立したいだろう」と。独立するために武装蜂起してオスマン帝国をやっつけてくれるんだったら第一次世界大戦後にお前の国、このへんに作って良いぜって。そういう約束をするんです。


中島:

いわゆるパレスチナのこと?


青木:

パレスチナを含めてこのあたり全体。

中島:

そこらへんに、アラブの人たちにその約束をするんですね。


青木:

このあたりから南側はだいたいアラブ人がたくさん住んでるんです。その彼らに国を作って良いよと。これがフサイン・マクマホン協定という。

一方でイギリス、戦争をやるためには金がいると。金はユダヤ人だというので、イギリスの銀行家、ユダヤ系の銀行家のロスチャイルドという人に頼んで、「あんたの顔でアメリカにいるユダヤ人から金を集めてくれないかな、それを貸してもらって我々は戦争したいんだよ」と。「もしそれをやってくれるんだったらば、知ってるよ。君たちパレスチナに国を作りたいんだろう?」と。


中島:

「作って良いよ」と。

青木:

アラブ人に独立を認めたエリアの中にパレスチナが入っていて。


中島:

酷いですね。


青木:

はい。


中島:

アラブの人たちには「ここに国を作って良いよ」という。その中にパレスチナがあって、パレスチナにユダヤの人たちに「国を作って良いよ」と。


青木:

言ったんですよね。そこまでで二枚舌でしょ。しかもイギリスってフランスやロシアと一緒に「戦争が終わったらトルコの領土を分割しようぜ」って。こういうのもやってるの、サイクス・ピコ協定といってね。


中島:

じゃあそのあとどうなるのかというところを、時間がもうないと思うので、次回やりたいと思います。


青木:

第一次世界大戦が終わったあとですね。


中島:

第一次世界大戦が終わったあと、じゃあどうなるかという話です。









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