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【環境保護の歴史】各国の意識の違いと事情【青木裕司と中島浩二の世界史ch:0054 】



世界史参考書の超ロングセラー『青木裕司 世界史B講義の実況中継』シリーズの青木裕司先生と、福岡を中心に活動する人気タレント中島浩二さんの青木裕司と中島浩二の世界史ch」の文章版です(許可を得ています)。


動画版:「【環境保護の歴史】各国の意識の違いと事情」

中島:

歴史を紐解けば未来が見える。大人の世界史チャンネル中島浩二です。そして河合塾のカリスマ講師、世界史の青木先生です。よろしくお願いします。


青木:

お願いします。


中島:

環境問題、これは本当に我々が今一番考えなきゃいけない喫緊の課題ですよね。


青木:

ついでに言うと私、声が前回からおかしいんですけども、たぶんヒノキ花粉ともうひとつは黄砂の影響なんですね。九州以外で見ている人はあんまりピンとこないかもしれないですね。


中島:

今回の黄砂は東北にまで到達したという。福岡、大牟田だったんですけど、大学のときに初めて黄砂ということを聞いて。だから大牟田には来てなかったと思うんです。福岡市内は昔から。結局中国の砂漠の砂が冬場に凍って、暖かくなってそれが溶けて、風に舞って、どんどんその砂が来てるんですよ。


青木:

それもゴビ砂漠とかモンゴル高原の近くだけじゃなくて、中央アジアのタクラマカン砂漠、もっと西側の中東の砂漠のあたりから、それも偏西風に乗って来てるらしいです。ただこれはもちろん日本にとっては環境破壊の側面もあるんだけども、これが昔から降り積もっているわけ。ミネラル分に富む砂が多くて、それが西日本の豊かな土壌を作った。あるいは海に落ちるとそれがプランクトンを増殖させるらしいんですよ。玄界灘を含む東シナ海の豊かな海を作っていったということもあるので。


中島:

悪いことばかりじゃない。ただ砂漠は実は広がってるんですよね。


青木:

広がってますね。

中島:

これに関しては、僕、鳥越さんの環境番組を見て。


青木:

鳥越俊太郎さん?


中島:

はい。鳥越俊太郎さんが2回目だったみたいで、初回やったのは10年前だったけれども、確実に前やったときは砂漠になってるからこっち側で撮ったねという話をしてらっしゃるんですよね。ここまでの規模になると果たして人間が止められるものなのか、それから人間が破壊しただけでそうなっているのかというのが。


青木:

そのへんはわからないですけどね。


中島:

わかりにくいところがあるんですよね。


青木:

ただ砂漠化の進行を止めるためにひとつ日本の技術が利用されつつあるというのをご存知ですか?


中島:

知らないです。


青木:

保水能力がなくなって砂漠化するじゃないですか。土の中に水を溜めるためのひとつの道具として紙おむつのおしっこを溜めるやつ、あれを応用したものが今利用されつつあるらしいんです。日本の技術が中国の砂漠化を防ぐためにひとつ活用されている。


中島:

あれっておしっこを溜めますね。それを砂漠の中に埋めていこうということですか。


青木:

そうそう、そういう活動が始まっているらしいです。ということも含めて前回の続きなんですけども、1992年のリオデジャネイロの国連環境開発会議。いろんな問題が出たけど一番大きいのは地球温暖化、これを防止するということで、そのための専門の部会ができて、COPなになにという会議がずっと繰り返されてきたんです。その中でも重要なのが1997年、京都で開かれたCOP3。別名京都会議ですね。


中島:

ここで採択されたものが京都議定書ですから。皆さんもね世代によってどれぐらいで覚えてらっしゃるかわからないですけれども、パリ協定の前はずっと京都議定書、あれはなんで京都で開かれたんですか?


青木:

いろいろあります、理由は。


中島:

京都議定書というふうに言われている以上、日本がイニシアチブを取っているんだみたいな僕は勝手なイメージが。


青木:

おっしゃる通りで、当時これ1997年なんですけど、1997年ということはアメリカ大統領がクリントンで、副大統領がアルゴアさん。ある意味環境保護の急進派ですよね。そういった背景もあって、日本でも温室効果ガス、特に二酸化炭素ですね、こういったものを日本はガンガン出してるので、これはなんとかせにゃいかんばいという話になるわけです、アメリカも含めて。じゃあ京都でやりましょうと。この会議が画期的だったのは、一般的に地球温暖化ダメですよね、防止しましょうじゃなくて、原因は二酸化炭素なんかの温室効果ガス、わかってるんだから、排出規制を作ろうと。「今これぐらいあんたの国は出しているよね、これぐらいまで削減しなさい」と。具体的な数値目標を出した。これが画期的だったんです。


中島:

これが確かこのときに比べて何%減みたいな、そういう話だったんですよね。


青木:

2012年までに今よりも6%、日本だったら、減らしなさい。アメリカは何%減らしなさい。EU諸国は、ヨーロッパは偉いですよ、8%減らしますと。


中島:

そういうことを言うんですよね。


青木:

ところが日本とヨーロッパ諸国はそのための努力をやろうとしたわけ。ところがアメリカは当時議会の多数派、特に条約の承認権を持っている上院の多数派が環境保護に対してどちらかというと冷たい共和党だったんです。クリントンが署名した京都議定書だったんだけども、結局条約としてはアメリカは拘束されなかったんです。


中島:

これがアメリカの、この大人の世界史チャンネルで見ていただければわかるんですけど、ア

メリカという国の成り立ちで権限というのが上院というところにあるということなんですよね。


青木:

大きな権限を持ってるんですよね。


中島:

だから難しいんですよね。


青木:

もうひとつの大きな問題はなにかというと、数値目標を設定して、二酸化炭素を削減して温室効果を防ぐと。それはわかるけど、インドや中国、あるいはその背後にいるアジアアフリカの国々の人たちがなんと言ったか。「欧米よ、あるいは日本よ、お前らこれまでさんざん二酸化炭素を撒き散らして工業を発展させて豊かになったじゃん。十分に豊かになったお前らが今から豊かになろうとする俺たちに対して削減しろと、それひどくない?」って。


中島:

これも難しい話で、わからんでもないんですよね。「あんたたちは今まで出してたのに、地球がこんなふうになったらじゃあ削減しようって、今から俺たちそれで稼いでいこうと思ってるのに」という話なんですよ。


青木:

結局それは確かにその通りなんですよ。というので京都会議のときには、中国やインドなんかに対しては具体的な数値目標って設定されなくて、一般的に削減の努力をすると言っていたんです。ところが、このあと5年間で状況が変わるんです。実際に中国なんて経済がバーンと発展するじゃないですか。そのぶん環境が破壊されて、特に北京の街の様子なんかがよく日本でも報道されていたけど。


中島:

新型コロナウイルスがなんだかんだなる前から北京の人たちが、日本では冬になったらマスクをする人が多かったですけど、みんなマスクして、しかもカメラを構えていて、その先が何メートルぐらいまで見えますか?という、あそこは石炭かなにかでストーブをたくんですよね、寒いところだから。それもかなりの人口なので、あれもかなり


青木:

あれも大きいです。工場だけじゃなくてね。家庭から出る二酸化炭素も大変だったんです。インドも同じような状況なんです。急速な経済発展で環境が破壊されて、特に大気汚染、これが猛烈に進行していったわけ。これで目が覚めるわけですね。中国もインドも「俺たちも削減するよ」と。話し合いが進められていって2015年のパリ会議ですね、COP21、これでもっと具体的な数値目標が出るわけですね。イギリスで産業革命が始まった18世紀後半から含めて21世紀が終わるまでに、気温上昇を2度未満に抑えていこうと。でないと間違いなく地球環境はダメになってしまう。


中島:

中国・インドが目が覚めたというのは明らかに人間の体に異変をきたしているんですよ。呼吸が苦しいという疾患を持っている人たちが増えたりだとか、これはなにも空気だけの話じゃないんですよね。


青木:

大気汚染というのは中国における環境汚染のひとつであって、水質汚染とか土壌汚染とかいっぱい出てくるわけですよ。これに政権が気がついて。気がついたら一党独裁の国は早いんですよ。あんまり肯定的に言いたくはないんだけど早いんです。


中島::

スピードが早いということですね。


青木:

さっき言ったように2015年のパリ会議、COP21でパリ協定が結ばれて、具体的な数値目標もさらに設定されると。さらに二酸化炭素の削減で苦労している国々に対しては資金援助をすると、総額1000億ドル。

これで良い方向に行くのかと思ったら、2016年に大統領に当選したアメリカのトラちゃんが。


中島:

トランプ大統領がパリ協定から離脱しますよというふうな話をしたんですよね。


青木:

結局2017年かな、パリ協定から実際に離脱したわけですよ。トランプ大統領の任期の4年間でいろんなことをやったんです、あの人。一番大きな罪はなにかというとパリ協定から離脱したこと。


中島:

なんで?ということになりますけれども簡単な話です。結局自分を支援してくれている人たちが環境破壊のことについてあーだこーだ言われるとビジネスがうまくいかないという人たちがたくさん支援してくれている。でもその会社がやることによって便利な世の中を享受しているのも我々だということもちゃんと知っておかなきゃいけないですよね。


青木:

そうなんですよ。アメリカの話が出たので一言言っておくと、そういうアメリカだったんだけど、実際に株式の動向を見てみると、二酸化炭素を出してしまう企業の株価って上がってないんですよ。再生エネルギー関係、あるいは環境保護に熱心な企業、そういう企業しか姉将来性はないというふうに投資家たちは考えているみたいで、そういう株は順調に上がってます。


中島:

僕一度、坂本龍一さんにインタビューしたときに、10年ぐらい前ですけれども、やっぱりカーボン・オフセットという言葉をおっしゃっていて、そういうことを、環境とかを考える企業のものを消費者がちょっと高くても選択するような世の中になるだろうというふうにおっしゃっていたんです。


青木:

その流れはできていますね。


中島:

だんだん。10年前に聞いたときに果たしてどうだろう、やっぱり安いものに人間って流れるんじゃないかというふうに思ったんですけれども、今だんだん人間が皮膚感覚で。だって皆さん考えてみてくださいよ、2011年の東日本大震災、これは本当に、大震災だから地球の地震というところから津波という。そこからあとどれだけ、九州北部豪雨だって何回ありましたか?と。台風だって何回ありましたか?だからやっぱりこの地球温暖化というのはかなり影響を与えているというふうに。


青木:

目に見える形で出てきてるんですよ。実際に我々は被害を受けてるわけですね。さらに言うとさっきのパリ協定で気温上昇を2度未満に抑えると言っているけども、パリ協定が2015年なんですけど、この6年間の研究で2度じゃやばいぞとなってきてるんですよ。2度じゃもう無理だと、もっと下げないとダメだと。そのためには当然ながら我々のエネルギー消費も少なくしなくちゃならないし、いろんなものを生産して販売するという経済システムの根本的な見直しが必要。


中島:

そうなんですよ。結局じゃあどこで便利な生活を、ここまで便利になったら良いねといってみんながその先をどうする?というところに考えが及ばないとなかなか難しいですよね。


青木:

結論を言っちゃうと特に先進国といわれる国々の人たちは生活水準、消費の水準を下げないとこれは無理ですね。そこまで来ている。欲望をコントロールする経済学というのが今後必要になってくる。


中島:

欲望の資本主義というNHKが番組もやりましたけれども。村上春樹さんとかもいろんなところで講演していますけれども、そこなんですよね。欲望をどこでストップさせるかということをそろそろ考える時期にきてるんじゃないか。最後にひとつだけアフリカの言葉を言って良いですか。「地球というのは決して祖先からもらったものではなく、子孫から借り受けているものだ」という。だからちゃんとした状況で申し送りしないとこれはダメなものなんだ

というふうに、アフリカの言葉で昔からあるらしいんですよね。


青木:

すばらしいですね。


中島:

本当にそう思います。環境のことについて2回シリーズでお届けしました。








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