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執筆者の写真順大 古川

令和 元号あれこれ

2019年5月1日から、新元号「令和」がスタートしました。現明仁上皇陛下が4月30日に退位して、皇太子徳仁親王が即位したのを受けての改元でした。202年ぶりの譲位です。天皇が攘夷するということも大きな話題となりました。

しかし、それと同じか、それ以上に世間で話題となったのは、新元号「令和」の出典でした。「令和」の典拠は、なんと『万葉集』。初めて漢籍ではなく日本の古典から元号(年号)が選定されたのです。

 

 

今回は、その出典である、『万葉集』巻5、梅花の歌32首の序文を詳しくみていきましょう。

 

原文は「天平二年正月十三日、萃于帥老之宅、申宴会也。于時初春令月 気淑風和梅披鏡前之粉、蘭薫珮後之香」です。

 

読み下すと「天平二年正月十三日、帥老の宅に萃(あつ)まり、宴会を申(の)ぶ。時に、初春の令月、気淑(うるは)しく風和(やは)らぐ。梅は鏡前の粉に披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香に薫る」となります。

 

現代語訳は「天平二年正月十三日、帥老の宅に集まって宴会を開く。あたかも初春のよき月、気は麗らかにして風は穏やかだ。梅は鏡台の前の白粉のような色に花開き、蘭草は腰につける匂袋のあとに従う香に薫っている」です。

以上、原文・読み下し・解釈は、新日本古典文学大系『万葉集』1、岩波書店

 

さらに、英文だと次のようになります。

 

On the thirteenth day of the first month of Tempyō 2 [730] people gathered at the residence of the venerable Governor-General and held a party. It is now the choice month(令月)of early spring: the weather is fine, the wind is soft(風和). The plum blossoms open--powder before a mirror; the orchids exhale--fragrance after a sachet.

英語訳は、Edwin Cranston氏、『The Gem-Glistening Cup』

 

以下、余談。 

元号の出典については、とにかく川口謙二・池田政弘著『改訂新版 元号事典』(東京美術選書・平成元年)が便利です。この本には、これまでの元号の出典や改元理由から、私年号、当時の様相などいろいろ書いてあるので、読んでも楽しい事典です。たとえば、昭和改元の時に新聞が出典を紹介したのですが、出典の引用に間違いがあったとかいうことも、わざわざ指摘してあります。

この本には平成改元まで掲載されています。たぶん今年、「令和」改元まで含めて改訂するんじゃないかと思うので(前回の版は平成元年出版)、それを待ってから購入するのがおすすめです。たぶん。

 

その他、元号関係でおもしろいものに、森鷗外の研究があります。受験だと、森鷗外はドイツ留学した人で、『舞姫』『即興詩人』など、文学で有名ですよね。あと、軍医もしてました。

実は、森鷗外はもともと漢文の教養がものすごい人でした。それで、天皇の漢風諡号(「醍醐」天皇とか)の出典を探しまくって、「帝諱考」を書き、同じように元号の出典を探しまくった「元号考」を、大正年間に書いてます。

岩波書店の『鷗外全集』20巻に収録されているので、こちらも読んでみると、いろいろと面白いです。中古でも7000円ぐらいするので、図書館で借りるのがいいと思います。

 

 

【参考文献等】

新日本古典文学大系『万葉集』1、岩波書店

川口謙二・池田政弘著『改訂新版 元号事典』

Edwin Cranston氏、『The Gem-Glistening Cup』

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