《英訳してみよう》
成績が悪かったので、脅威の記憶術の本にすがることにした。
※ 脅威の記憶術…marvelous mnemonic system
想像してみましょう。
あなたは、大学に行くために東京の予備校に通っています。将来的には立派な国家公務員になるためです。
あなたには友だちがいます。同じく国家公務員を目指していて、これまで一緒に勉強をがんばってきました。友だちは地方の出身です。そして、両親と親戚に仕送りをしてもらっていて、予備校の寮に住んでいます。友だちは、いつも「オレのことはMAOと呼んで」とか言ってます。きっとバンドでもやってるんでしょう。
病気になりそうなほど眩しい日差しのある日、MAO君はぱったりと予備校に来なくなりました。
あなたが「どうしたのかな?」と思って、周りの人に聞いてみると、MAO君を最後に見たという人がいました。
その人に話を聞いてみると、こんなことを言いました。
「ああ、MAO君ね。なんか、一緒に歩いてメシ食いにいってたらさ、道端にちょっと清潔とはいいにくいファンキーなファッションした、スキンヘッドがいたのよ。
そしたらなんか、MAO君がそいつに話しかけられたんだ。
そしたら、そいつはさ、なんか『脅威の記憶術があるよ』的なこと言ってるっぽいの。
オレは、うさんくせーなぁと思ってたら、、、なんかMAO君がスキンヘッドをガン見して、『キタコレ!!』的な顔してんの。
んで、ファンキーなスキンヘッドの話によると、なんかその記憶術をマスターするためには、冬だったら一発で死ぬよ的なヤバイ山にこもって、100万回ひとり言を言うんだってさ。
意味分からんし、オレは腹減ったから、『もう行こうぜ』って言おうとして、MAO君のほうを見たらね。もうね、MAO君の目がランランとね、オレは勉強をやめるぞ!ジョジョーッー!!的に輝いてんのね。そしたらね、次の日からかな。MAO君見なくなったね。」
この話を聞いたときの、自分の気持ちを想像できましたか?
この状況をどう解釈しますか。
さて、話はまったく変わりますが、空海のプロフィールを見てみましょう。
上の話は関係ないですよ。ぜったいぜったい関係ないですよ。
空海は地方讃岐(四国)の人。
幼名はMAO真魚(まお)。
788年、東京都に出る。
予備校大学に入るが退学。
四国の難所(※石鎚山)で苦行を重ねた。
(以上、『角川日本史辞典』より)
大学とは、貴族を対象とする都の教育機関で官吏養成機関でしたね。
官吏とは今なら国家公務員、というか高級官僚ですね。
石鎚山のヤバさは、画像検索すればすぐに分かります。
空海はなぜ大学を退学したのか?それは、「スキンヘッド修行者との出会いをきっかけに出家」(『日本史通覧』帝国書院)です。
そして、このとき、修行者なる者が真魚くんに教えてくれたのが、虚空蔵求聞持法(こくうぞうぐもんじほう)です。
虚空蔵求聞持法とはッ??
後に、空海はこう語っています。
「ふとした機会に、1人の沙門(出家)と知りあいになり、虚空蔵求聞持法を教わった。この行法の依り所とされている経典には、「もし、この経に示されている作法に従って、虚空蔵菩薩の真言を百万遍となえれば、一切の経典を暗記することができる」と書いている。」
(空海が記した『三教指帰』の現代語訳〈高木訷元・岡村圭真編『密教の聖者 空海』吉川弘文館〉)
と・な・え・れ・ば、 す・べ・て・を・暗記!
脅ーーー威の記憶術!!!
地道な暗記なんてクソ食らえ!人生一発逆転キタコレ!!
と、考えるのはフツーの人であり、凡人です。りっぱなりっぱな空海様はけっして、けっして、けッしてそのようなことはお考えにならず、深遠なる心を持って仏道を志したに決まっています。決まっています。決まっているのです。
受験生の皆さんは、友だちが「山に行く!!記憶術マスターしてくる!!」的なことを言い出したら、ちゃんとなだめてあげてくださいね。
参考書をそっと差し出して、「君がマスターすべきなのはこれだよ」的なことを、優しく教えてあげてください。もちろん、『誰も得しない日本史』を差し出すのは、分かってる人です。
《英語訳》
As my grades were terrible, I decided to throw myself on the book about marvelous mnemonic system.
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