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紫色は何を使って染めるのか? 西洋ではカタツムリで染めると聞いたのですが。(歴史部生徒質問)

更新日:2023年10月20日


【目次】

古代日本

古代の日本では、蘇芳か紫草で布を染めて、紫系の色を出していました。『延喜式』などに記述があるし、研究もたくさんあるので、わりかし有名な話です。色味の一覧については、今回は(一般的なサイトですが)このサイト(Le moineau)を参考にしました。

どんなときの服が蘇芳で染められて、どんなときは紫草(の根である紫根)で染められるのかについては今回は踏み込みませんが、日本では古代から植物で紫色を出していたのは間違いないです。

天皇以外の人がどんなときに紫色を使っていたのかについては、(染料を紫草に限定していますが)小倉久美子氏の「飛鳥・奈良時代における紫色の特質」(『万葉古代学研究年報』31-44・2014年)が、読みやすいかもです。


蘇芳染め紫根染めについては、マイトデザインワークスさんのサイトが色もきれいで、とても見やすかったです。



じゃあ、古代中国の紫は?となるわけですよね。


古代中国

『国立歴史民俗博物館研究報告』など、いくつかあたってみましたが、こちらも紫草でよさそうです。

「紫綬」については、Googleブックスの『中国の伝統色 故宮の至宝から読み解く色彩の美』(郭浩・李鍵明著、翔泳社、2023年)に「芥拾紫(かいしゅうし)」というものがありました。


おおっ!金印紫綬の色ではあるまいか!



あと、調べていく過程でおもしろかったのが、

紫は高貴な色だとされているのですが、孔子なんかは紫色はきらいだったようです。(参考:路玉昌「中国の色彩文化(I)」(『吉備国際大学社会学部研究紀要』第18号・2008年))


緑綬

次に、うえまつ先生がおもしろい情報をくれました。緑色の紐もあって、それも植物で染めたというものです。


うえまつ先生曰く:

生徒さんが言っていたカタツムリから作る紫色はおそらく「tyrian purple」(※後述)でしょう。

参考になる史料を見つけたので、ご紹介まで。

『続漢書』輿服志の注釈に、「緑綬」について以下の文があります。(のちに「緑綬」は紫綬に変更される。大庭脩監修・漢書百官公卿表研究会『『漢書』百官公卿表訳注』18~19ページ参照)


前書(『漢書』)曰「相國、丞相皆秦官,金印紫綬。高帝相國綠綬。」徐廣曰:「金印綠綟綬。音戾,草名也。以染似綠,又云似紫。

上記によると、漢の初代皇帝である高祖劉邦(高帝)の時にあったとされる「緑綬」について、徐広が「綠綟綬」と注釈しています。「綟(レイ)」とは草の名であり、染めた色が緑のようであり、また紫のようでもある」とあります。


さらに、うえまつ先生が調査を続けてくれました。

うえまつ先生曰く:

本日、某大学で講義があったので、附属図書館所蔵の『全訳後漢書』で当該史料について確認してきました。改めてご報告します。


『続漢書』輿服志、劉昭注 前書曰「相國、丞相皆秦官,金印紫綬。高帝相國綠綬。」徐廣曰:「金印綠綟綬。綟音戾,草名也。以染似綠,又云似紫。

【現代語訳】 『漢書』(巻19上、百官公卿表)に、「相国・丞相はみな秦の官で、金印・紫綬であった。高帝(劉邦)は相国を緑綬とした」とある。徐広は、「金印・綠綟綬(りょくれいじゅ)である。綟の音は戾(れい)で,草の名である。染めると緑のようであり、また紫のようでもある」と言っている。

(渡邉義浩・仙石知子編『全訳後漢書第10冊、149頁)


うえまつ先生ありがとうございます!

「緑綬」については「綟(レイ)」」という植物なのですね。

さて、となれば、今度は「綟(レイ)」」という植物が何なのかが気になるところですよね。


「綟(レイ)」」とは?

「綟(レイ)」」の訓読みは「もじ」です。

まず、「綟」」の字が入った植物として馴染みがありそうなものとして、ツツジ科の「捩木・綟木(ねじき)」がありますが、これは捩れた木という意味である「捩木」に(たぶん)誤用だかなんだかで「綟木」の表記もあてるようになったものだと思われるので、除外しておきます。なお、捩木は漆器を磨くのに使うようです。このサイトが読みやすいです→EVERGREEN

捩木・綟木(ねじき)

これも結論からですが、『国史大辞典』や『日本国語大辞典』などをいろいろとあたってみたのですが、日本では「綟」は「綟子(もじ)」「綟織(もじおり)」のように「緯(よこいと)の打ちこみに際して経(たていと)を搦(から)めて織った」(『日本国語大辞典』)布に用いていますが、(先述の「捩木・綟木(ねじき)」以外では)植物の名前には用いてなさそうです。

よって、これが確実に「綟(レイ)」だと言えるものは見つかりませんでした。

ただ、一応これが「綟(レイ)」じゃねえか!?というものがありました


朝日ネットのサイトの写真を見てください。



麹塵色ですが、苅安(カリヤス)草と紫草をつかって緑系の色を出しています。

紫草も使用しているので、色的に「緑のようであり、また紫のようでもある」と表現するにぴったりな気がします。高貴な位置づけだし。

カリヤスはこちらのサイト(EVERGREEN )をご参照ください。

「緑のようであり、また紫のようでもある」という色味については、仙福屋宗介のサイトにあった【麹塵染の帯締め】の写真が雰囲気出ています。まさに、緑のようであり、また紫のようでもある!

情報求む、ではありますが、今は「綟(レイ)」はカリヤスの類かなあと提案しておきます。



tyrian purple

ここで、生徒さんが言っていた西洋の紫をみてみましょう。


古代エジプトではフェニキア産のテツボラ属のホネガイの発色分泌液から得た染料で布を紫に染めたそうです。これを「チリアン紫」と言います。(参考:新井清・大岩さつき・井村三郎「古代染色の化学的研究 第1報 古代紫染について(予報)」(『奈良大学紀要』1・1972年)

ホネガイについては、Wikipediaを貼っておきます



その他の動物性(貝とか虫とか)の紫色の染料については、(一般的なサイトですが)フルーリア東京のサイトが参考になりました。


追記(2023/10/20)

毎日新聞でおもしろい記事を見つけました。





















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