歴史部|ワシントン体制――三つの条約と残された問い
重要なポイント
・ワシントン体制(1920年代)に関する日本史の学習会を行った
・ワシントン会議(1921~22年)の背景・内容・影響について、該当箇所の音読と質疑応答を行った
・四カ国条約・九カ国条約・ワシントン海軍軍縮条約の内容を確認した
・幣原外交(協調外交)の特徴と日ソ基本条約についても学習した
・複数の未解決の疑問点を調査課題として持ち越した
・次回は日本史「社会運動の勃興」と、世界史「イタリア統一」を扱う予定
議論されたトピック
ワシントン会議招集の背景
AさんからIさんまでが順番に該当箇所を音読し、内容を確認した。
・詳細
・Aさん:第一次世界大戦後、国際政治の主導権がイギリスからアメリカへ移りつつあった。ソヴィエト政権は独自外交を展開し、中国では民族運動が高揚していた。ドイツの賠償総額は1320億金マルクとされ、戦勝国側もアメリカへの戦債返済を抱えていた。
・Bさん:1921年、アメリカ大統領ハーディングが、海軍軍備の縮小と太平洋・東アジアの諸問題を協議するためワシントン会議を招集した。日本では戦後恐慌による財政上の行き詰まりがあり、原内閣も軍縮に活路を見いだした。
・結論
・ワシントン会議はアメリカ主導で開催され、海軍軍縮と東アジアの緊張緩和が主要課題となった。アメリカ側には日本の軍事的・帝国的膨張を制限する狙いもあった。
四カ国条約・九カ国条約の内容
・詳細
・Cさん:米・英・日・仏による四カ国条約が成立し、従来の日英同盟は終了した。1922年には九カ国条約が結ばれ、中国の主権・独立、領土的・行政的保全と、各国の商工業上の機会均等などが確認され、石井・ランシング協定は廃棄された。
・結論
・日英同盟が終了し、中国をめぐる列強間では機会均等などの原則が確認された。
ワシントン海軍軍縮条約の内容と日本海軍内の不満
・詳細
・Dさん:主力艦保有比率は米5・英5・日3・仏1.67・伊1.67と定められ、主力艦建造を原則10年間停止する「海軍休日」が設けられた。日本海軍の軍令部などには対米英7割を主張して強い不満を抱く者もいたが、海軍大臣加藤友三郎が調印に踏み切った。
・Hさん(質問):保有比率への不満から暴動などは起きなかったのか。
・のぶた先生:不満を抱いたのは主に海軍内の一部であり、国民的な暴動は起きていない。ただし、後の条約派・艦隊派の対立につながる背景の一つになった。
・結論
・国民的な暴動は発生しなかったが、海軍内部の対立につながる一因となった。
フランス・イタリアの保有比率1.67への評価
・詳細
・Gさん(質問):フランス・イタリアの1.67は意図的に減らされたものか、それとも妥当な数値か。
・のぶた先生:条約前に両国がどれほどの主力艦を保有していたかとの比較が必要である。そもそも軍縮条約であり、各国とも財政難から艦艇増強が難しい状況だった。比率の1.67が5のおよそ3分の1であることも確認した。
・結論
・条約前の保有量との比較が必要であり、詳細は調査課題として持ち越した。
四カ国条約にフランスが参加した理由
・詳細
・Fさん(質問):太平洋にフランス領が見当たらないのに、なぜ四カ国条約にフランスが入っているのか。
・Jさん:ニューヘブリディーズ(英仏共同統治領、現バヌアツ)を指摘した。
・うえまつ先生:南シナ海は太平洋西部の縁海の一つであると補足した。
・のぶた先生:フランスはフランス領ポリネシアやニューカレドニアなど太平洋に領土・権益を有しており、第一次世界大戦の主要戦勝国でもあったと説明した。
・結論
・フランスは太平洋に領土・権益を有し、海軍軍縮交渉に参加する主要国でもあった。
フランス・イタリアの軍縮条約に対する受け止め
・詳細
・Dさん(質問):フランスとイタリアは保有比率をどう受け止めたのか。
・のぶた先生:両国の海軍力や財政事情にも触れつつ、当時の世論や政府内の反応は資料で確認する必要があるとして宿題にした。
・結論
・推測で確定せず、のぶた先生が調査することになった。
山梨半造・宇垣一成の軍縮(陸軍)と馬匹削減
・詳細
・Jさん(質問):山梨半造の軍縮では6万2500人を削減したとあるが、宇垣一成はどれくらい削減したか。また「馬匹」の読み方は何か。
・のぶた先生:授業内で資料集を参照し、山梨軍縮で約1万3000頭、宇垣軍縮で約6000頭、合わせて約2万頭近くの馬が削減されたことを確認した。「馬匹」は「ばひつ」と読む。
・結論
・授業内で参照した資料では、両軍縮を合わせて約2万頭近くの馬が削減された。
軍縮で余剰となった馬の処遇
・詳細
・Bさん(質問):仕事を失った馬はどうなったのか。
・のぶた先生:荷物運搬や種馬などに転用された可能性、殺処分された可能性、機械化に伴う馬の需要減少などを挙げたが、裏付け資料の確認が必要だとした。
・Jさん:食用にされた可能性を質問した。
・のぶた先生:軍用馬を大量に食用へ回したと断定できる資料は、授業中には確認できなかった。
・結論
・余剰軍馬の処遇は、この時点では確定せず、資料による確認が必要な論点として残った。
ベルサイユ体制とワシントン体制の「対応」関係
・詳細
・Fさん(質問):ベルサイユ体制に「対応する」とはどういう意味か。
・のぶた先生:当時の人々が二つの体制を意図的に対にして作ったという意味ではなく、第一次世界大戦後、ヨーロッパとアジア・太平洋でそれぞれ形成された国際秩序を、後世の歴史叙述で対応させて捉える表現だと説明した。
・結論
・「対応する」は、後世の歴史的評価による表現である。
ドイツ賠償金とアメリカの関係
・詳細
・Fさん(質問):ドイツはアメリカへ直接、賠償金を支払わなかったのか。
・のぶた先生・うえまつ先生:ドイツの賠償と、イギリス・フランスなど連合国の対米戦債は別の債務であることを整理した。アメリカはベルサイユ条約を批准せず、ドイツ賠償の回収には強い関心を示さなかった一方、連合国に対する戦債の返済は求めた。
・Fさん(追加質問):アメリカによるドイツ復興支援は借金に当たるか。
・のぶた先生:ドーズ案の下では、アメリカを中心とする外国資本からドイツへの融資が行われ、ドイツの賠償支払いとヨーロッパ諸国の対米戦債返済を支える資金循環が生まれたと説明した。
・結論
・ドイツ賠償と連合国の対米戦債を区別し、ドーズ案の下でアメリカ資本からドイツへの融資が行われた構造を確認した。
補助艦(巡洋艦)の定義と役割
・詳細
・Aさん(質問):補助艦制限における巡洋艦とは、どのような役割を持つ艦なのか。
・のぶた先生:戦艦と巡洋艦では排水量に加えて、兵装・装甲・速力・想定任務にも違いがあり、駆逐艦になると任務がさらに異なることを確認した。
・結論
・艦種の違いは、排水量だけでなく装備や任務を含めて捉える必要がある。
九カ国条約へのソヴィエト・ロシア不参加の理由
・詳細
・Fさん(質問):九カ国条約にロシアが入っていないのはなぜか。
・のぶた先生:ロシア革命後のソヴィエト・ロシアは国際的に孤立しており、ワシントン会議に招かれなかったと説明した。参加した九カ国はアメリカ・イギリス・フランス・イタリア・中国・ベルギー・オランダ・ポルトガル・日本である。
・結論
・会議開催時はソ連成立前であり、ソヴィエト・ロシアはワシントン会議に招かれなかった。
五・三〇事件と幣原外交の評価
・詳細
・Fさん(質問):幣原外交期の中国人労働者の待遇問題は、正義と平和を重視する国際的風潮の中で批判されなかったのか。
・のぶた先生:五・三〇事件は反日運動だけではなく、イギリスなど列強全体を対象とした反帝国主義運動の性格があったと説明した。
・うえまつ先生:五・三〇事件(五・三〇運動)は1925年5月30日、上海共同租界の警察がデモ隊に発砲したことを契機に全国へ広がった。運動は反英を軸としつつ、列強の帝国主義に反対する性格を持ったと補足した。
・結論
・五・三〇事件は、日本だけでなくイギリスなど列強全体を対象とする反帝国主義運動として捉える必要がある。
ワシントン会議への日本全権派遣メンバーの選定理由
・詳細
・Dさん(質問):なぜ徳川家達・幣原喜重郎が全権として派遣されたのか。
・のぶた先生:幣原喜重郎は当時駐米大使だったため、派遣は職務上理解しやすい。徳川家達は貴族院議長であり、外交官ではなかったため、選定理由は調査が必要だとした。
・結論
・幣原の派遣は駐米大使という立場から説明できるが、徳川家達の選定理由は要調査となった。
第一次世界大戦後のドイツ・イギリス・フランスの国内政策と反発
・詳細
・Iさん(質問):賠償金や債務を抱えた各国はどのような国内政策をとり、反発はあったのか。
・のぶた先生:ドイツではインフレが深刻化して大きな社会的反発が生じた。イギリス・フランスも戦後の債務や復興の問題を抱え、その後の世界恐慌で苦境が深まったことを確認し、詳しい比較は予習課題とした。
・結論
・三国の事情を一括せず、ドイツのインフレと、イギリス・フランスの戦後復興・債務問題を分けて捉えることになった。
次回授業の内容確認
・詳細
・のぶた先生:日本史の次回は「社会運動の勃興」を扱う。
・うえまつ先生:世界史は「イタリアの統一とフランス第二帝政」の続きとして、サルデーニャ王国によるイタリア統一を扱う。
・結論
・次回は日本史「社会運動の勃興」・世界史「イタリア統一」を実施する。
アクションアイテム
・のぶた先生
・フランス・イタリアの条約前の主力艦保有量を調査する
・フランス・イタリアにおける軍縮条約の受け止めを調査する
・徳川家達がワシントン会議全権に選ばれた理由を調査する
・ドーズ案によるアメリカからドイツへの融資の具体的内容を確認する
・調査結果を歴史部通信に記載する
・参加者全員
・ドイツのインフレと賠償問題を予習する
・次回の日本史「社会運動の勃興」と世界史「イタリア統一」を準備する
・歴史部通信を確認する



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