質問:「前回の歴史部で、時間切れでできなかった質問です。 参考書の373ページに「いわゆる解放令」と書いてあったのですが、なぜ「いわゆる」がついているのですか?」
まずは、「いわゆる」の使い方について、辞書をみてみましょう。
【日本国語大辞典】
(動詞「いう(言)」の未然形に上代の受身の助動詞「ゆ」の連体形が付いて一語化したもの)
(1)世間一般にいわれている。また、一般にそうたとえられている。
(2)すでに周知の。言うまでもない。
↑現在は(1)の意味で使用されていますね。(2)は古典に出てくる用法です。
【デジタル大辞泉】
世間一般に言われる。俗に言う。よく言う。
以上の辞書の説明をふまえて、私の言葉で説明すると、
「いわゆる」とは、正確ではないけれど、そう表現したほうが伝わりやすいときに使用する連体詞です。
というわけで、「解放令」という表現がどのように正確ではないのかを説明します。
『国史大辞典』から引用してみましょう。
(「穢多非人等の称廃止令」(←いわゆる「解放令」のこと)とは、)封建的な賤民身分の廃止とその職業の自由とを認めた明治四年(一八七一)八月二十八日発布の太政官布告。その全文は「穢多非人等ノ称被廃候条自今身分職業共平民同様タルヘキ事」。
とあります。
なお、Wikipediaの情報ではありますが、「正式には「明治4年8月28日太政官布告第449号」という法令番号のみ」らしいです。
というわけで、いわゆる「解放令」のような太政官布告には正式名称はなく、研究者が使用しているような「穢多非人等の称廃止令」を毎回使用すると文章が長くなるし、中高生には伝わりにくいので、教科書などでは「いわゆる解放令」のように、不正確なことは承知の上で、「いわゆる」という連体詞をつけて表現しているのです。
あと、「いわゆるの」結構重要な使い方として、
自分は必ずしも賛成していないのだけれど、他にいい表現方法がなかったり、そう言わないと一般に通じない言葉に使用することが多いです。
「鎖国」のように現在の研究水準的にはふさわしくない言葉や、「コロナ」などが分かりやす例になるかと思います。
「鎖国」の語をそのまま使うと、「なんだ、最近の研究とか知らないの~~~~?」って言われちゃうので、「いわゆる」を付けて、「わかっているけど仕方なく使っているんだ。ボクは悪くないんだ」というように、責任を回避するために使われるんですね。
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